●こんなお話
ヤクザと取引していた友人がヤクザに娘を誘拐されたってんで、日本へ行って友人の娘を救出するために日本の友人を訪ねて一緒にヤクザと戦う話。
●感想
旧友が突然主人公のもとを訪ねてくる。話を聞くと、自分の娘がヤクザに誘拐されてしまったという。かつて義理を受けた仲でもあり、主人公はその頼みを受けて日本へ向かう。彼は友人の家に滞在しながら、昔の恋人と再会したり、彼女の兄を訪ねて助けを求めたりする。
やがて主人公たちは誘拐された娘の居場所を突き止め、敵対するヤクザの組織と激しい戦いを繰り広げた末に無事救出に成功する。しかし、その行動によって今度は自分たちが命を狙われる立場になってしまう。事態を打開しようと主人公は再び彼女の兄を訪ねるが、明確な支援は得られないまま時間が過ぎていく。
追い詰められる中で、敵のヤクザと旧友が実は裏で手を組んでいたことが明かされる。裏切りと陰謀の渦のなか、刺客が家に押し入り、主人公の恋人の娘が命を落とすという悲劇も起きてしまう。
怒りに駆られた主人公と仲間たちは、敵の本拠地に殴り込みをかける。激しい銃撃戦と斬り合いの末、彼らは相手を倒しきり、最後はふたりの男が互いに指を詰めることでその絆を確かめ合うようなエンディング。
物語の冒頭から人物の関係や背景がややつかみにくく、序盤は少し置いていかれるような印象がありました。ですが話が進むにつれ、徐々に日本を舞台としたハードボイルドな空気に飲み込まれていきました。特に、恋人との再会や夜の街をジャズの音色とともに歩くシーンには、どこか切なさと艶っぽさがあって印象に残ります。
異文化描写において、少し奇妙に映る日本観も確かにありますが、全体としては東映の任侠映画を敬意をもって模倣している雰囲気があり、私はそこに親しみを感じました。高倉健さんが登場することで物語が引き締まり、彼とロバート・ミッチャム演じる主人公との関係が深まっていく様子がとても魅力的でした。
ふたりはかつて同じ女性を愛していて、その過去が後半に差し掛かって明らかになると、三角関係の切なさと不器用な男たちの生き様が浮かび上がってきます。過去の恋と現在の戦いが交差する展開には、どこか哀愁が漂っており胸を打たれました。
クライマックスでは、血にまみれながらも戦い抜くふたりの姿が強烈な印象を残します。健さんが上半身裸でドスを手に敵陣へと向かい、ミッチャムが両手に武器を構える場面には、アメリカ映画でありながら完全に東映の美学が宿っていました。真上から捉えたカットや、空気を切るような静かな演出なども映像的に印象深かったです。
そして、何よりこの映画は「義理」や「人情」という日本的な価値観を異国の視点で丁寧に描こうとしていたように思います。物語の核心に迫る場面で、指を詰めるという行為を白人の俳優が演じることで、文化の違いと普遍的な絆が交錯するような瞬間が生まれていたように感じました。
事件の構造や真犯人については早めに見当がつく部分もありますが、それ以上に描かれているのは人の生き様や男の友情であり、終わったあともどこか心に残る作品だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2013/09/26 DVD 2023/05/13 BS12
監督 | シドニー・ポラック |
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脚色 | ポール・シュレイダー |
ロバート・タウン | |
原作 | レナード・シュレイダー |
出演 | ブライアン・キース |
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ロバート・ミッチャム | |
ハーブ・エーデルマン | |
高倉健 | |
岸恵子 | |
Kyosuke Machida | |
岡田英次 | |
汐路章 |