映画【パージ/大統領令】感想(ネタバレ):政治と暴力が交差する夜、逃げる者たちの人間ドラマ

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●こんなお話

 年に1度1晩だけ犯罪が許される法律が施行されているアメリカで法案を廃止しようとする大統領候補と彼女を守るシークレットサービスが命を狙われる逃避行の話。

●感想

 表向きには、犯罪率の低下を目的とする法案として施行されている“パージ法”。しかしその実態は、富裕層が低所得者層や弱者を合法的に排除するための装置のようなもので、その不条理さに気づいたひとりの女性議員が立ち上がる。彼女は、パージ法の撤廃を訴えて選挙戦に挑んでいた。舞台となるのはパージ実施が間近に迫ったアメリカで、彼女の周囲には、コンビニを経営する黒人の青年や日常に苦しむ市民たちが静かに生きていた。

 市井の人々の穏やかな日常が、ある夜を境に一変する。街の静寂を破るようにサイレンが鳴り響き、年に一度すべての犯罪が合法となる12時間が始まると、彼女や周囲の人々の命が急激に脅かされていく。最初は室内に身を潜めていた一行だったが、思わぬ襲撃を受けて逃走を余儀なくされ、街の混乱の中を右往左往しながら命を守る戦いが繰り広げられていく。

 シリーズの中でも、今回は特にアクションの比重が高く、銃撃戦や肉弾戦が連続して展開される中、登場人物たちの奮闘が描かれていく。観ている間は自然と手に汗を握ってしまうようなスリリングなシーンの連続で、純粋なアクション映画としても十分に楽しめる構成になっていたと思います。

 また、今回登場するキャラクターたちが一様に印象的で、物語に深みと彩りを加えていました。殺人を娯楽として海外からやってくる“ツーリスト”たちの不気味さは背筋が寒くなるような存在感がありましたし、チョコレートバーを求めて店に押しかける女子高生の突飛さも、どこかユーモラスで記憶に残る場面でした。そうした細かなエピソードの積み重ねが、物語の緊張感とはまた別のリズムを生んでいて、飽きずに観ていられました。

 ただ、物語の終盤、教会での儀式の場面がやや長く感じられてしまい、テンポが落ちてしまったように思います。もう少しコンパクトに描いても良かったかもしれません。また、銃撃戦に関しても、同じ構図の繰り返しが目立ってくることで、アクションの新鮮味がやや薄れていくような印象も受けました。そのあたりが少しだけ惜しい部分でした。

 とはいえ、主人公たちが命をかけて逃げる姿に寄り添いながら、100分間ずっと緊張と興奮を味わえる作品だったと思います。フィクションの世界としては荒唐無稽な設定ではあるものの、現実の社会とどこか重なってしまうような瞬間があって、その意味でも見ごたえのある映画でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2017/12/05  Amazonプライム・ビデオ

監督ジェームズ・デモナコ 
脚本ジェームズ・デモナコ 
製作ジェイソン・ブラム 
マイケル・ベイ 
出演フランク・グリロ 
エリザベス・ミッチェル 
ミケルティ・ウィリアムソン 

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