映画【どん底】感想(ネタバレ)

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●こんなお話

 貧乏長屋に住んでる住人たちの話。

●感想

 映画の全編を長屋のみで進んで、人物の出入りで物語の展開が起こるという演劇的な話で120分でS♯が20シーンくらいしかないです。舞台となる長屋も壁も扉も傾いているのにも関わらず、扉がビシっビシっと開け閉めしているのが美術さんの力は凄いと思いました。

 ゴミが捨てられる場所に住んでいて、社会の底辺のような人たちが常に怒ってイライラして惰性でかつ明るく生きてる姿は一見すると関係のないような世界ですが。見ていくうちにまるで自分達を見ているような気持ちにさせてくれました。

 主人公らしい人物はおらず、次から次へと人物が出入りしていろんなことを語っていきます。ボクが驚いたのは、S♯14の空き地での場面でおかよとおせん、それに嘉平と殿様と辰が喋っているところで背景だと思っていたところから急に立ち上がる留吉に驚きました。いつからそこに座っていたのかと巻き戻してみてしまうこと間違いないです。
 強欲な大家夫婦、虐げられてる妹、陰気な鋳掛屋と瀕死の女房、アル中の元役者、遊び人、自称元旗本の殿様、ちょっといい男の泥棒、飴売りの女、売春婦、そこへやってくるお遍路装束の老人。このお遍路さんが善人なのか悪人なのかがわからない。誰も話を聞かない売春婦の話を聞いてあげ、役者にはどこかの寺でタダで治療できる場所があると希望を説き、瀕死の女房にはあの世の素晴らしさを説く。けれど、騒ぎになるといつの間にか姿を消してしまう。左朴全さんのつかみどころのないキャラクターが深みを与えていたと思います。他にも山田五十鈴さんの怖いこと、他にも中村鴈治郎さん、香川京子さんの可愛さ。素晴らしい役者さんたちの動きをダイナミックにとらえていて息つく暇の無い映画でした。

 「トントンちきめ、トンちきめ、こんちきしょう、こんちきしょう、地獄の沙汰も金次第、仏の慈悲も金次第」という馬鹿囃子もインパクト大で、最後の踊りから一転の「祭りが台無しだ」という捨て台詞で暗転というのも人間の悲しさ残酷さ辛さと笑いを見たような気持ちになる終わりでした。

☆☆☆

鑑賞日:2012/05/25 DVD

監督黒澤明 
脚本黒澤明 
小国英雄 
出演中村鴈治郎 
山田五十鈴 
香川京子 
上田吉二郎 
三船敏郎 
東野英治郎 
三好栄子 
根岸明美 
清川虹子 
三井弘次 
藤原釜足 
千秋実 
田中春男 
左卜全 
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