映画【ラストサムライ】感想(ネタバレ):ハリウッドが描く日本の美と精神

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●こんなお話

 いわゆるサムライと中央政府に反乱を起こす話。

●感想

 ハリウッドが描いた“サムライ像”として独特の魅力を放つ作品でした。物語は明治維新の後、急速に近代化する日本を舞台に、欧米の価値観と武士道精神がぶつかり合う姿を描いています。異国の視点から日本の歴史を見つめ直すという試みは、それだけで興味深く、異文化理解の物語としても豊かに響くものでした。

 主人公オールグレンは、西洋的な軍人として日本にやって来るが、戦場で出会ったサムライたちの中に生き方の美学を見出していく。彼らが背負う信念や誇りに触れることで、彼自身の価値観が静かに変化していく姿が描かれている。近代兵器に対して刀や弓で立ち向かう姿は、時代に抗う象徴であり、同時に失われゆく日本の魂への哀惜をも感じさせる。弓を引くサムライたちや、甲冑姿で突撃する戦士たちの勇姿には、どこか幻想的な美しさがありました。

 戦闘シーンの中で、西洋の銃火器と日本の刀が交錯する瞬間には、文明の衝突を象徴するような緊張感が漂う。にもかかわらず、物語の中心には人間同士の敬意と理解があり、単なる戦争映画にとどまらない深みが感じられました。トム・クルーズ演じるオールグレンが、異文化に身を投じ、次第にその価値を理解していく過程は、まさにカルチャー・エクスチェンジの物語といえると思います。

 また、日本人俳優たちの存在感も素晴らしく。渡辺謙の堂々たる演技は、サムライの誇りと悲哀を体現しており、ハリウッド映画の中で日本の精神性を確かに刻みつけていました。彼の演じる勝元の佇まいには、時代の流れに抗う者の孤高が漂い、その静かな覚悟に胸を打たれます。ハリウッドの大作でこれだけ日本人俳優が本格的に描かれているという点でも、感慨深いものがありました。

 終盤で描かれる明治天皇の場面は、やや急展開に感じられる部分もありましたが、伝統と変革の間で揺れる日本の姿を象徴的にまとめていたと思います。歴史的正確さというよりも、サムライの精神と日本文化の美しさを伝えることに重きを置いた作品として、世界に向けて日本を誇らしく見せてくれた印象が強いです。西洋人が見た“サムライ”というフィルターを通して、日本の文化を再発見するような映画だったと思います。

☆☆☆☆

鑑賞日:2010/06/23 Blu-ray 2020/08/13 NETFLIX

監督エドワード・ズウィック 
脚本エドワード・ズウィック 
マーシャル・ハースコヴィッツ 
ジョン・ローガン 
原案ジョン・ローガン 
出演トム・クルーズ 
ティモシー・スポール 
ビリー・コノリー 
トニー・ゴールドウィン 
渡辺謙 
真田広之 
小雪 
中村七之助 
菅田俊 
福本清三 
原田眞人 
小山田シン 
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