●こんなお話
在韓米軍のせいで漢江に怪物が現れて娘さんがさらわれたので、ファミリー大騒ぎな話。
●感想
物語は、米軍が漢江に化学物質を流すという、なんとも物騒な出来事から始まる。のどかな河原の日常に、突如として災厄の影が差し込み、それがやがて大きな恐怖へと発展していく。
主人公は、漢江沿いで売店を営む男。いつもぼんやりしていて、客の注文を聞き間違えては、厳格な父親に叱られる日々を送っている。彼には娘がいて、父として、また兄として、家族とゆるやかな時間を過ごしていた。ある日、妹のアーチェリーの大会を家族そろって応援しに行くものの、結果は3位。ほんのりとした悔しさと、変わらぬ日常が描かれる。
ところが、河原に突如として現れた謎の巨大生物が、その穏やかな時間を一瞬にして引き裂いてしまう。人々が逃げ惑う中、主人公は娘の手を取って逃げ出すが、慌てたあまり他人の子どもの手を引いてしまい、肝心の娘は怪物にさらわれてしまう。
政府は怪物を「ウィルス感染源」と断定し、主人公一家を接触者として強制隔離。だが、さらわれた娘から電話がかかってきたことをきっかけに、家族は彼女が生きていると信じて独自に救出へと乗り出す。病院を抜け出し、闇業者の手を借りて逃走。手がかりの少ないまま、漢江沿いの下水をあてもなく捜索する。
疲れ果て、いったん自宅の売店に戻る一家。そこで父親が静かに語る「昔は賢かった」という息子への回想。しかしその穏やかな時間も束の間、再び怪物が現れ、雨水を飲んでいる姿を目撃。父は息子の猟銃を借りて応戦するが、主人公が弾の数を間違えていたため発砲できず、命を落とす。
主人公は再び捕まり、政府はウィルス感染の危険を喧伝しながらも、内部では「そんなウィルスは存在しない」と告げている。なんとも不可解な状況の中、主人公は「脳の研究」の名目で頭蓋に穴を開けられるという非道な扱いを受ける。しかし隙を見て逃走。娘の居場所が橋の北側にあると弟が突き止めるも、裏切りにあい崖から落下。意識を失ってしまう。
一方、妹は兄からのメールを受けて橋の北側を目指す。怪物と遭遇して吹き飛ばされるが、彼女もまた意識を取り戻し、再び立ち上がる。弟はホームレスの協力を得て現場へ向かい、主人公もその現場へと走る。
政府は「ウィルス対策」として強力な薬品を空中散布し、抗議デモが巻き起こる混乱の中、怪物が現れる。それぞれの家族が得意なスキルを活かして怪物に立ち向かい、ついに仕留めることに成功する。
しかし、救出した娘はすでに息絶えていた。主人公は、怪物に飲み込まれていた少年を救い出し、物語のラストではその少年とともに売店で食事をとるという新たな生活が描かれて終わる。
冒頭から、昼間の漢江に怪物が登場し、人々がパニックになるというシークエンスはインパクトが強く、作品全体のテンションを高く保っていて素晴らしい導入だったと感じました。怪物の姿をはっきりと見せることで、視覚的な驚きと恐怖を観客に与えつつ、意外にもすぐに笑いが混ざるコメディの空気へと変わっていくのが面白かったです。
隔離された家族が、娘の電話をきっかけに病院から逃走するシーンのテンポも良く、警備の甘さやユルさに笑いながらも、家族の絆や切実な想いがしっかり描かれていたのが印象的でした。音楽の使い方も軽快で、深刻になりすぎない演出が絶妙だったと思います。
ただ、全体として展開にやや間延びを感じる部分もあり、特に序盤から中盤までが少しゆっくりと進む印象はありました。それでも、主人公一家がそれぞれ別行動をとりながらも、最終的に再集結していく流れには熱いものがありました。
猟銃の弾を数え間違えて父親を死なせてしまうという展開は、あまりに不器用で悲しい出来事ですが、同時に主人公の不完全さを強く印象づけており、人間味のある描写として心に残りました。弟が電話の基地局から娘の居場所を特定し、それを受けた妹がマラソンのように駆けていくくだりも、リズム感があり印象的でした。
クライマックスでの総力戦、そして家族それぞれの役割が重なっていく展開には高揚感がありました。火炎瓶を投げ損ねてしまう弟の場面は、笑いと緊張感が同居する名シーンだったと思います。
結末に関しては、疑問に思う部分もありましたが、主人公が新たな子どもと暮らしていく姿を描くことで、失ったものと向き合いながらも、次へと向かうという余韻が残る終わり方だったと感じました。モンスター映画でありながら、家族の物語でもあり、韓国映画ならではのユーモアと社会風刺を織り交ぜた素晴らしい作品だったと思います。
☆☆☆☆
鑑賞日:2014/01/22 DVD 2023/08/14 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ポン・ジュノ |
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脚本 | ポン・ジュノ |
ハ・ジョンウォン | |
パク・チョルヒョン |
出演 | ソン・ガンホ |
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ピョン・ヒボン | |
パク・ヘイル | |
ペ・ドゥナ | |
コ・アソン |