映画【グエムル 漢江の怪物】感想(ネタバレ):家族と怪物と笑いの疾走劇。緩急自在な韓国エンタメ映画

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●こんなお話

 在韓米軍のせいで漢江に怪物が現れて娘さんがさらわれたので、ファミリー大騒ぎな話。

●感想

 2000年、在韓米軍の病理研究所で働くアメリカ人職員が、韓国人助手に大量のホルムアルデヒドを排水口へ流すよう命じる。助手は環境汚染を懸念するものの命令は覆らず、その薬品は漢江へと流されてしまう。

 それから数年後。漢江の河川敷で小さな売店を営むパク一家は、父ヒボン、長男ガンドゥ、長女ナムジュ、次男ナミル、そしてガンドゥの娘ヒョンソとともに暮らしていた。ガンドゥはどこか頼りなく、店番をしながら居眠りしてしまうような男だったが、娘のヒョンソを何よりも大切にしていた。

 ある日、漢江の橋の下に奇妙な生物がぶら下がっているのを人々が発見する。最初は珍しい動物を見るような感覚で眺めていた観光客たちだったが、その生物は突然暴れ出し、河川敷へ飛び込む。巨大な怪物は猛烈な勢いで人々を襲撃し始め、穏やかだった河原は一瞬で地獄のような混乱に包まれる。

 ガンドゥもヒョンソの手を引いて逃げ出すが、混乱の中で手を引いていた相手が娘ではなく別の子どもだったことに気づく。振り返った瞬間、ヒョンソは怪物に捕まり、そのまま連れ去られてしまう。

 家族はヒョンソが死亡したものと思い込み、遺族たちとともに体育館へ集められる。ところが、ガンドゥの携帯電話が鳴る。電話の相手はヒョンソだった。彼女は暗い下水施設のような場所から電話をかけており、自分がまだ生きていることを伝える。しかし詳しい場所はわからず、通話は途切れてしまう。

 ガンドゥたちは政府や軍に救助を求めるが、怪物に接触した人間には未知のウイルスが感染する可能性があるとして隔離されてしまう。ところが一家は病院を脱走し、自力でヒョンソを探し始める。

 一方のヒョンソは、怪物の巣となっている巨大な下水施設に閉じ込められていた。そこには同じようにさらわれた少年セジュもいた。怪物は人間をすぐには食べず、巣の天井付近に吐き出して溜め込む習性を持っていたため、ヒョンソたちは辛うじて生き延びていた。

 ガンドゥたちは下水道や河川敷を捜索し続ける。元アーチェリー韓国代表のナムジュは弓を手に戦う覚悟を決め、失業中のナミルも独自に情報収集を行う。家族は不器用ながらも、それぞれの方法でヒョンソ救出へ向かっていく。

 途中、ガンドゥたちは一度売店へ戻る。そこで父ヒボンは、幼い頃のガンドゥが本当は賢い子どもだったことを語る。その直後に怪物が再び現れる。ヒボンは猟銃で応戦しようとするものの、ガンドゥが弾の残数を勘違いしていたため発砲できず、その隙に怪物に襲われ命を落としてしまう。

 ガンドゥは再び政府に拘束される。政府はウイルスの危険性を強調しているが、内部では感染症そのものの存在が疑われていた。ガンドゥは研究対象として頭蓋骨に穴を開ける手術を受けそうになるが、隙を突いて脱走する。

 その頃、ナミルは携帯電話の通信記録からヒョンソの居場所を突き止める。しかし情報提供者に裏切られ、崖から転落してしまう。それでも家族はそれぞれ現場へ向かい続ける。

 一方、ヒョンソはセジュを守りながら脱出の機会を探っていた。しかし怪物が巣へ戻ってきたことで逃走は失敗する。ヒョンソは最後までセジュを守ろうとする。

 やがて家族は怪物の巣へ到着する。ようやく娘にたどり着いたガンドゥ。その直後、怪物が現れる。時を同じくして政府は「エージェント・イエロー」と呼ばれる薬品を漢江周辺へ散布しようとしており、現場では大規模な抗議デモが行われていた。混乱の中で怪物が暴れ出し、家族による最後の戦いが始まる。

 ナミルは火炎瓶を投げ、ナムジュは弓で狙撃し、ガンドゥは怪物の体内から助け出したセジュを守りながら戦う。火炎瓶で燃え上がった怪物へナムジュが渾身の矢を放つ。矢は怪物へ深く突き刺さり、ついに怪物は絶命する。

 戦いには勝利したものの、ヒョンソは亡くなり。数か月後、ガンドゥは売店を再開し、ヒョンソが命懸けで守った少年セジュと一緒に暮らしている。雪の降る夜、二人は静かに食卓を囲んでおしまい。


 怪獣映画としての面白さだけでなく、家族映画としての魅力が非常に強い作品でした。

 まず印象的なのは、怪物が昼間の漢江に堂々と姿を現す序盤です。多くの怪獣映画では怪物の全貌をなかなか見せませんが、本作は開始早々に怪物が暴れ回ります。河川敷で人々が逃げ惑うシーンは迫力満点で、一気に作品へ引き込まれました。

 しかし本作が面白いのは、単なるパニック映画にならない点です。主人公のガンドゥは決して有能なヒーローではなく、どこか間の抜けた人物として描かれています。娘を助けたい気持ちは誰よりも強いのに、肝心なところで失敗してしまう。その不器用さが妙に人間らしく、応援したくなる主人公でした。

 隔離病棟から一家で脱走する場面などは、シリアスな状況にもかかわらず笑いが混ざっていて、ポン・ジュノ監督らしい独特のユーモアが発揮されています。家族全員が少しずつ頼りなく見えるのに、娘を助けるためだけは必死になる姿が印象的でした。

 また、父ヒボンが命を落とす場面は非常に切なかったです。ガンドゥが弾数を勘違いしていたため発砲できず、結果的に父を失ってしまう展開はやりきれません。しかし、その失敗こそがガンドゥという人物を象徴しており、本作が単純な英雄譚ではないことを強く感じさせました。

 クライマックスの総力戦も見応え十分でした。ナムジュのアーチェリー、ナミルの火炎瓶、ガンドゥの突撃と、それまで別々に行動していた家族がそれぞれの役割を果たして怪物へ立ち向かう流れには大きな高揚感がありました。派手な超人バトルではなく、不器用な家族が力を合わせて戦うからこそ胸を打たれます。

 一方で中盤はやや寄り道が多く、怪物捜索の過程が少し長く感じる部分もありました。ただ、その遠回りがあるからこそ家族それぞれの人物像が深まり、終盤の再集結がより感動的になっていたとも感じます。

 そして何より、怪獣映画でありながら家族の喪失と再生の物語として成立している点が素晴らしかったです。ヒョンソは救えなかったものの、彼女が守ったセジュをガンドゥが引き取るラストには静かな温かさがありました。社会風刺、ブラックユーモア、怪獣パニック、家族ドラマを見事に融合させた、ポン・ジュノ監督らしい魅力に満ちた一本でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2014/01/22 DVD 2023/08/14 Amazonプライム・ビデオ 2026/06/18 U-NEXT

監督ポン・ジュノ 
脚本ポン・ジュノ 
ハ・ジョンウォン 
パク・チョルヒョン 
出演ソン・ガンホ 
ピョン・ヒボン 
パク・ヘイル 
ペ・ドゥナ 
コ・アソン 
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