●こんなお話
ホビットの思いがけない冒険の話。
詳細ネタバレあらすじ
111歳の誕生日を迎えようとしているビルボ・バギンズは、自分が若かった頃に経験した冒険を記録するため、物語を書き始めていた。ビルボは甥のフロドに、かつて自分が経験した旅について語り始める。
物語は60年ほど前へ。かつて、はなれ山ことエレボールには、ドワーフの王スロールが治める巨大な王国が築かれていた。山の内部には莫大な金銀財宝が蓄えられ、ドワーフたちは豊かな暮らしを送っていた。しかし、その財宝に目をつけた巨大なドラゴン、スマウグがエレボールを襲撃する。
スマウグはエレボールだけでなく、ふもとの人間の町デイルも襲い、町を焼き払う。ドワーフたちはスマウグに王国を奪われ、エレボールから追い出されることになる。
幼い王子だったトーリン・オーケンシールドも、祖国を失ったドワーフの一人だった。やがて成長したトーリンは、祖父スロールがモリアでアゾグ率いるオーク軍と戦い、命を落としたことを知る。
トーリンはアゾグと戦い、その腕を切り落とす。しかしアゾグは生き延び、トーリンに深い恨みを抱くことになる。この戦いでトーリンはオークの攻撃から身を守るため、オークの盾を拾って戦ったことから「オーケンシールド」と呼ばれるようになった。
それから長い年月が経ち、ホビット庄ではビルボ・バギンズが平穏な毎日を送っていた。
ある日、ビルボの家を魔法使いのガンダルフが訪れる。ビルボはガンダルフを迎えるが、その夜から次々とドワーフたちが家にやって来る。トーリンを中心とした13人のドワーフは、ビルボの家で食事をし、酒を飲み、歌を歌いながら大騒ぎする。
突然大勢の客が押しかけたことで、ビルボは困惑する。しかし、ドワーフたちが何のために集まったのかを知ることになる。トーリンたちは、スマウグに奪われた故郷エレボールを取り戻そうとしていた。そのためには、はなれ山まで旅をして、ドラゴンのスマウグから王国を奪還しなければならない。
ガンダルフはその旅にビルボを加えようとしていた。ビルボには、ドワーフたちが必要とする「忍びの者」としての才能があると考えていたからだ。
しかしビルボ自身は冒険を望んでおらず、ホビット庄で静かに暮らし、決まった時間に食事をして、自分の家で穏やかな生活を送ることを好んでいた。それでも、ドワーフたちが故郷を失った悲しみを歌う姿を目にしたことで、ビルボの心に変化が起きる。
翌朝、ドワーフたちが出発した後、ビルボは自分の中にある冒険への気持ちに気づく。彼は急いで家を飛び出し、ドワーフたちの後を追う。
こうしてビルボは、トーリン、フィーリ、キーリ、ドワーリン、バーリン、ボフール、ボンブール、ビフール、オイン、グローイン、ノーリ、ドーリ、そしてガンダルフとともに、エレボールを目指す旅へ出発する。
旅の途中、一行は3人のトロル、トム、バート、ウィリアムに捕まってしまう。トロルたちはドワーフたちを食べようとするが、ビルボは彼らの注意を引きつけるために話しかける。
そこにガンダルフが現れ、太陽の光を浴びせてトロルたちは石にする。ビルボたちは危機を逃れ、トロルの野営地を調べる。
そこには武器が隠されていた。ガンダルフはエルフが作った剣グラムドリングを手に入れ、トーリンはオルクリストを手にする。ビルボも小さな剣を手に入れ、後にそれを「つらぬき丸」と名付ける。その後、一行はエルロンドが治める裂け谷へ向かう。
裂け谷ではエルフたちから歓迎を受けるが、トーリンはエルフに対して複雑な感情を抱いていた。かつてスマウグがエレボールを襲った際、エルフたちはドワーフを救うために動かなかったから。
一方、ガンダルフとエルロンドは、トーリンが持っていたエレボールの地図を調べる。月明かりによって隠されていた文字が浮かび上がり、はなれ山には秘密の扉が存在することが判明する。その扉を開くためには、特定の時期に鍵を使う必要があった。
エレボールへ入るための手がかりを得た一行は、裂け谷を出発する。霧ふり山脈を越える途中、一行は巨大な石の巨人たちが戦う場面に遭遇する。山そのものが揺れるほどの激しい戦いに巻き込まれ、ドワーフたちは必死に逃げる。
その後、一行は洞窟の中へ避難するが、そこはゴブリンたちの地下世界へつながっていた。ゴブリンたちはドワーフたちを捕らえ、地下深くにあるゴブリン町へ連れていく。
トーリンたちはゴブリン王の前に連れてこられる。ゴブリン王はトーリンが持っているオルクリストを見て、彼が誰なのかに気づく。しかし、ガンダルフがゴブリンたちの隙を突いて攻撃を仕掛ける。ドワーフたちも反撃し、一行はゴブリン町から脱出しようとする。
その混乱の中、ビルボは仲間たちとはぐれてしまう。一人で地下をさまよっていたビルボは、洞窟の中で黄金の指輪を拾う。この時のビルボは、その指輪が後に中つ国の歴史を大きく変える「一つの指輪」だとは知らない。ビルボはさらに洞窟の奥へ進み、地下の湖でゴラムと遭遇する。
ゴラムはビルボを食べようとするが、ビルボはすぐに殺されることを避けるため、ゴラムになぞなぞを出す。ゴラムもなぞなぞを返し、二人は互いに問題を出し合う。やがてビルボは、最後の質問として「ポケットに何が入っている?」と尋ねる。
ゴラムはそれを正式ななぞなぞとして認めようとしない。しかし、ビルボはその間に、先ほど拾った指輪をポケットから取り出して身につける。すると、ビルボの姿が消える。指輪には身につけた者の姿を隠す力があった。
透明になったビルボは、ゴラムに気づかれないように洞窟の出口を探す。ゴラムは自分が「いとしいしと」と呼ぶ指輪を失ったことに気づき、必死になって探し続ける。
ビルボはゴラムを殺せる場所まで追い詰める。しかし、剣を手にしたビルボはゴラムを殺すことができず、そのまま彼の横を通り過ぎる。ビルボは洞窟の出口へ向かい、最後には指輪を外してゴラムの前に姿を現す。そしてゴラムを残して洞窟から脱出する。
地上へ戻ったビルボは、再びドワーフたちと合流する。トーリンは、ビルボが自分たちを見捨てて逃げたのではないかと思っていた。しかしビルボが戻ってきたことで、トーリンのビルボに対する見方も少しずつ変化していく。
しかし、一行を追跡していた敵はゴブリンだけではなかった。かつてトーリンと戦い、腕を切り落とされたオークのアゾグが生きていた。
アゾグはトーリンへの復讐を果たすため、オークとワーグの軍勢を率いて一行を追跡する。ドワーフたちは森の中でオークとワーグに襲われる。追い詰められた彼らは木の上へ逃げるが、ワーグたちは木を倒そうとする。
ガンダルフは松ぼっくりに火をつけ、それを武器として使いながらワーグを追い払う。しかし、オークたちは攻撃を続ける。やがてトーリンは、アゾグと直接対決することになる。
トーリンはアゾグに立ち向かうが、激しい攻撃を受けて追い詰められる。ビルボはトーリンを助けるため、つらぬき丸を手にしてオークたちに立ち向かう。
トーリンはビルボを危険な戦いに巻き込みたくないが、ビルボは逃げずにトーリンのそばに残る。アゾグはトーリンに重傷を負わせる。しかし、ビルボたちが戦ったことでトーリンは命を取り留める。
そこへ巨大な大鷲たちが現れ、一行を救出する。ドワーフたちは大鷲によってオークとワーグの追跡から逃れ、山の上へ運ばれる。その後、一行は再びエレボールを目指す。
山の内部ではスマウグが眠っていた。大量の財宝の上に横たわっていたスマウグが目を覚ます。巨大なドラゴンの目が開かれ、これから始まる戦いを予感させるところで物語はおしまい。
●感想
画面の美しさと豪華さ、そして映像の迫力は本当に素晴らしいです。ピーター・ジャクソン監督らしい大作ファンタジーのスケール感が随所に感じられ、空撮で広大な風景をドーンと見せたかと思えば、次の瞬間には敵が大量に襲ってきて、登場人物たちが追い詰められます。
「もう駄目なのでは」と思ったところで仲間が助けに入り、そこから一気に盛り上がっていく展開が何度も繰り返されます。この「ピンチになる→敵が迫る→仲間が助けに来る→さらに大きな危機が訪れる」という流れは非常に分かりやすく、長時間の上映時間でも観客を飽きさせない力があります。
そこにハワード・ショアの音楽が加わることで、さらに大作映画らしい高揚感が生まれています。映像、音楽、アクションが一体となって盛り上がっていくので、「これぞピーター・ジャクソン版ファンタジー映画」という楽しさはしっかり味わえました。
特にドワーフたちが一斉に動き出す場面や、ゴブリン町での大規模なアクション、ワーグに追われる場面などは、画面いっぱいにキャラクターが動き回ります。大勢の敵と味方が同時に登場することで、圧倒的なスケールを感じられるのは魅力です。
ただ、その一方で、画面の中に100人近いキャラクターが同時に動いているようなアクションになると、迫力がある反面、「今どこを見ればいいのか分からない」と感じる瞬間もありました。敵と味方が入り乱れ、カメラも激しく動くため、状況を追うだけで精一杯になる場面もあります。
上映時間は約2時間50分と長く、ビルボが旅に出るまでにもかなりの時間が使われています。ドワーフたちがビルボの家に集まり、食事をして、歌を歌い、旅の目的が明かされるまでを丁寧に描いているため、冒険が本格的に始まるまでが長く感じられました。
さらに旅が始まってからも、一つひとつのシークエンスが非常に丁寧に作られています。トロルとの遭遇、裂け谷、石の巨人、ゴブリン町、ゴラムとのなぞなぞ、オークとワーグの襲撃など、それぞれが一本の映画の見せ場になりそうな規模で描かれています。
そのため、映像的には豪華なのですが、「もう少し短くてもよかったのでは」と感じる部分もありました。
特にゴラムとのなぞなぞの場面は、ビルボとゴラムの関係を描くうえで重要な場面ではあるものの、かなり長く感じました。じっくり描くことでゴラムの不気味さや指輪への執着、ビルボの機転などは伝わってきますが、映像技術のすごさをじっくり見せるための場面にも見えてしまいました。
また、ドワーフが13人もいるため、個人的には最後まで全員の顔と名前を完全に覚えるのが難しかったです。トーリン、フィーリ、キーリ、バーリン、ドワーリンあたりは印象に残りますが、それ以外のドワーフは誰が誰なのか分からなくなることもありました。
ここは『ロード・オブ・ザ・リング』の旅の仲間9人と比べると、かなり違いを感じます。『ロード・オブ・ザ・リング』では、それぞれのキャラクターに個性や役割があり、9人という人数もあって比較的覚えやすかったです。それに対して本作はドワーフの人数が多く、さらに敵側のオークやゴブリンも多数登場するため、人物を把握する難しさがありました。
個人的には、全員をCGで表現する方向よりも、『ロード・オブ・ザ・リング』第1作のように、実際の衣装や特殊メイク、着ぐるみなどを組み合わせた映像のほうが、画面に存在する生物としての迫力を感じられたかもしれません。もちろん本作のCG技術は非常に高く、スマウグやゴラムなどCGだからこそ成立するキャラクターの表現には大きな魅力があります。ただ、大人数が登場する場面では、実物感のある造形のほうが個人的には好みでした。
それでも、本作で一番好きなのは、やはりビルボ自身の変化です。最初のビルボは、冒険とは無縁の生活を送っている普通のホビットです。突然ガンダルフとドワーフたちが家にやって来ても困惑するだけで、自分から危険な旅に出ようとはしません。
ところが、ドワーフたちの故郷を失った悲しみを知り、彼らの旅に興味を持ち始めます。そして、実際に旅へ出てからは、何度も危険な目に遭いながらも少しずつ行動を変えていきます。
ゴラムを殺すことができる状況で殺さなかったことも、アゾグに追い詰められたトーリンを助けようとしたことも、ビルボという人物の優しさと勇気が表れています。
最初は「忍びの者」として連れてこられたビルボが、旅を続けるうちに少しずつドワーフたちから仲間として認められていく流れも良かったです。
特にトーリンとの関係は、本作の大きな見どころだと思います。王として誇り高く、最初はビルボを頼りない存在として見ていたトーリンが、最後には自分を助けるために危険へ飛び込んだビルボを認める。この変化には、長い上映時間をかけて二人の関係を描いた意味が感じられました。
そして、ガンダルフはやはり強いです。魔法使いとして圧倒的な力を持っているように見えるのに、実際にやっていることは松ぼっくりに火をつけて敵に投げるなど、妙に地味な場面も多いのが面白いところです。
「偉大な魔法使いなのだから、もっとすごい魔法を使えばいいのに」と思ってしまうのですが、ガンダルフが本気を出さず、知恵や経験を使って仲間を導いていく存在として描かれているのも魅力なのだと思います。
全体としては、約3時間という長い上映時間の中に、旅立ち、トロル、裂け谷、ゴブリン町、ゴラム、オーク、アゾグ、大鷲、ネクロマンサーと、次々に大きな見せ場が詰め込まれています。ひとつひとつの場面をたっぷり楽しめる反面、長さを感じる部分もありました。
それでも、ビルボが平穏なホビットから冒険へ踏み出し、トーリンたちとの絆を少しずつ築いていく物語としては楽しめました。最後にスマウグが目を覚まし、これから本格的なドラゴンとの戦いが始まるところで終わるため、「ここからどうなるのか」という期待を残して次作へつなげる構成も印象的です。
壮大な映像と音楽、大規模なアクションをたっぷり味わいたい人には楽しめる作品ですし、『ロード・オブ・ザ・リング』につながる中つ国の物語として、ビルボが一つの指輪を手に入れるまでを描いた作品としても興味深かったです。個人的にはもう少しコンパクトにまとめてもらえると、さらに見やすかったように感じましたが、ピーター・ジャクソン監督が作り上げたファンタジー世界の豪華さを存分に楽しめる一本でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2012/12/15 Blu-ray 2026/07/29 U-NEXT
| 監督 | ピーター・ジャクソン |
|---|---|
| 脚本 | フラン・ウォルシュ |
| フィリッパ・ボウエン | |
| ギレルモ・デル・トロ | |
| ピーター・ジャクソン | |
| 原作 | J・R・R・トールキン |
| 出演 | イアン・マッケラン |
|---|---|
| マーティン・フリーマン | |
| リチャード・アーミティッジ | |
| ケイト・ブランシェット | |
| イアン・ホルム | |
| クリストファー・リー | |
| ヒューゴ・ウィーヴィング | |
| イライジャ・ウッド | |
| アンディ・サーキス |


