●こんなお話
大切な税金の使い道を偉い人たちが勝手に決めていく話。
●感想
冒頭の坊ノ岬沖海戦から始まる戦闘シーンが圧巻。日本映画のCGだと、戦艦などの描写がリアルでも、そこに人がいないように感じてしまって現実感に欠けることが多かったですが、この作品ではCGと実写の境目が自然で、まるで自分もその場にいるような臨場感があった。ツカミとして完璧なスタートだったと思います。
物語は戦艦か空母か、どちらを建造するかという国の大きな選択の話へと進んでいく。主人公は数学の天才で、戦艦建造の見積もりに潜む矛盾を見抜き、政治的な妨害にも負けず数学の力で突破していく。国の上層部が税金を勝手に使い込む様子や、その体質が昔から変わっていないことを描く視点は、戦争映画としてはあまり見ない切り口で新鮮でした。
天才数学者が知識と論理で危機を乗り越えていく展開は、安定した面白さ。観客の予想を上回る展開が続く中、クライマックスの会議シーンの緊張感は特に印象的でした。戦艦大和建造の裏側をめぐるフィクションとしても、見ごたえのある新しい視点でしたし、山本五十六が非戦論者のように見せかけて、実は戦争で力を振るいたい衝動を持っていたという描写も深みがあってよかったです。
惜しかったのは女性キャラクターの扱い。主人公の教え子しか登場せず、そのキャラも登場するだけで周囲の好意を集めてしまうような、都合の良い無敵キャラになっていて物足りなさを感じました。また、130分という長さの中で会話中心のシーンが続くため、動きが少なく、個人的には中盤以降やや退屈にも感じました。
それでも、山崎貴監督の作品としては最も完成度が高く、素直に楽しめるエンタメ大作だったと思います。日本映画の技術力と物語力の進化を感じさせる一本でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2019/08/01 TOHOシネマズ日比谷 2020/05/20 Blu-ray
監督 | 山崎貴 |
---|---|
脚本 | 山崎貴 |
原作 | 三田紀房 |
出演 | 菅田将暉 |
---|---|
柄本佑 | |
浜辺美波 | |
笑福亭鶴瓶 | |
小林克也 | |
小日向文世 | |
國村隼 | |
橋爪功 | |
田中泯 | |
舘ひろし |
コメント