映画【ドアマン】感想(ネタバレ):孤独な戦いに挑む元海兵隊

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●こんなお話

 元海兵隊がドアマンとして勤務したマンションで強盗団が襲ってきて戦う話。

●感想

 かつて海兵隊員として要人警護の任務に就いていたアリ・ギャロウェイは、襲撃を受けて失敗し、大使を守れなかったという大きな自責を抱えて軍を去ることになる。休暇から帰国した彼女は、心の傷を抱えたまま、ニューヨークの高級アパートに住む叔父の紹介でドアマンとして働き始める。

 戦場とは違う静かな日々の中で、住民を見守るという新しい役割を担うアリ。しかし甥や姪と再会してもどこかぎこちなく、家族との間に微妙な距離があることを痛感してしまう。そんな平穏を覆すように、アパートには退去した住人が残した名画を狙う武装グループが忍び寄っていた。彼らは元軍人ヴィクターを中心に、イースター休暇で住人が減った隙を突いて建物を封鎖し、人質をとって美術品を奪おうとする。

 静かな夜は銃声に変わり、叔父の一家も捕らえられてしまう。かつての任務で背負った罪を思い起こすように、アリは再び戦いの場に立たされる。ドアマンとしての役割を超え、再び兵士としての自分を呼び覚まさざるを得なかった。

 狭い廊下や薄暗い倉庫を舞台に、アリは即席の武器や知恵を駆使して敵を迎え撃ち、子どもたちを守ろうと奮闘する。火災報知器を作動させて助けを呼ぼうとするが失敗。甥と共に逃走を試みても、外にいた警官すらグループの仲間という絶望的な状況に追い込まれる。

 最終的に、部下の裏切りに遭ったヴィクターは射殺され、アリは最後の敵と一騎打ちとなる。手榴弾を使った決死の戦いで相手を退け、一件は収束を迎える。

 冒頭の銃撃戦は細かいカット割りで状況が分かりにくく、つかみとしてはやや弱かった印象があります。物語自体は「ダイ・ハード」の構成に近く、主人公が孤立した建物で武装勢力と戦う展開ですが、本筋に入るまでが長く、上映時間の短さに反して序盤が間延びした印象を受けました。一方で、ジャン・レノ演じるボスが決め台詞の「シャルヴィービギン」と放つ場面には貫禄があり、印象的なシーンだったと思います。

 ただ、北村龍平監督作品らしい迫力あるアクションは少なく、銃撃や格闘シーンは低予算ゆえの制約もあって見劣りする部分が目立ちました。独特のカメラワークや演出も多用されていましたが、画面が目まぐるしく動きすぎて何が起きているのか把握しづらい場面も少なくなかったです。

 舞台となるマンションの内部も特に目を引く美術はなく、暗く狭い空間を移動するのみで、逃走と迎撃のスリルが活かされていないように感じました。ジャン・レノの演技も抑えられており、悪役としてのカリスマ性には乏しかった印象です。

 結果として、ドアマンという設定が物語に必然性を持つことはあまりなく、むしろタイトルから期待される要素が活かされていなかったと感じます。とはいえ、シンプルなアクション映画として、主人公が過去の罪を背負いながら戦いに挑む姿には一定の魅力がありました。

☆☆

鑑賞日:2021/07/19 シネマカリテ 2025/08/30 Amazonプライム・ビデオ

監督北村龍平 
脚本リオール・シェフェッツ 
ジョー・スワンソン 
デヴォン・ローズ 
出演ルビー・ローズ 
ジャン・レノ 
伊藤英明 
アクセル・ヘニー 
ルパート・エヴァンス 
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