●こんなお話
再生数稼ぎのために湖底に沈んだ屋敷に行ったら恐怖体験する話。
●感想
動画の再生数で収入を得ようとしているカップルがいた。ふたりは視聴者の興味を引くため、人気のない場所や廃墟などを巡る活動をしていた。ある日、地元に詳しい男性から「湖に沈んだ屋敷がある」という話を聞き、興味をそそられてその場所を訪れることになる。
案内された先でダイビング装備を整え、湖に潜ると、そこには確かに水中に屋敷が存在していた。沈んでいるにもかかわらず建物はしっかりと形を保ち、内部には家具が整えられたまま残っていて、やけに新しさすら感じさせる。ふたりは好奇心を抱きながら撮影と探索を続けていくが、やがて彼女のほうに幻覚や幻聴のような現象が起き始める。
屋敷の奥へと進んでいくうちに、鎖に繋がれた遺体を発見し、恐怖心が高まる。水中から脱出しようとするが、扉や窓はなぜか開かず、ガラスも割れずに逃げ場がなくなっていく。ふたりは徐々にパニック状態となり、やがて彼氏が何かに取り憑かれたかのような異様な様子を見せ始める。彼女は彼を正気に戻そうと必死に働きかけるが、次々に現れる恐ろしい存在に襲われ、ふたりは引き離されてしまう。
やがて彼女だけが屋敷から脱出するものの、酸素が残りわずかで、必死に水面を目指して泳ぎながらエンディングを迎える。
水中という特殊なシチュエーションで繰り広げられる恐怖はとても効果的で、水中を歩いてくる人影など、これまであまり見たことのないビジュアルが印象的でした。その映像体験だけでも十分に引き込まれるものがあり、作品としての強みになっていたように思います。
一方で、恐怖演出に入るとカメラが大きく揺れ、泡が視界を覆うなど、何が起きているのかを把握しづらい時間があり、個人的にはその部分で集中力が削がれてしまいました。とはいえ、狙っている演出意図は伝わってきましたし、水中という制約のなかでここまで表現できていることは素直にすごいと感じました。
物語の背後には、屋敷に住んでいた過去の夫婦による誘拐や悪魔崇拝といった背景があるようですが、あえて断片的に描かれているので、すべてを理解するにはやや想像力が必要かもしれません。その曖昧さもまた、恐怖の余白として機能していたのではないかと思います。
なにより、映画の大半が水中で撮影されていること自体が驚きであり、視覚的な没入感が強く、観終わったあとに本編よりも「どうやって撮ったんだろう」と思わず撮影の裏側に興味が向いてしまうような作品でした。映像体験としての魅力が詰まった1本だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2023/05/21 Amazon・プライム・ビデオ
監督 | ジュリアン・モーリー |
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アレクサンドル・バスティロ | |
脚本 | ジュリアン・モーリー |
アレクサンドル・バスティロ | |
製作総指揮 | ルイ・レテリエ |
出演 | ジェームズ・ジャガー |
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カミーユ・ロウ | |
エリック・サヴァン |