●こんなお話
結構大きめな少年がベビーシッターが夜中にカルト集団みたいになって襲ってくる話。
●感想
学校で日々いじめを受けていた少年は、クラスで唯一気にかけてくれる女の子と少しずつ距離を縮めていた。同じように、彼にとって心の拠り所となっていたのが、両親が外出中に面倒を見てくれるベビーシッターの存在だった。年上の彼女は、子どもの視点を大事にし、時に冗談を交えながらも真剣に相談に乗ってくれる相手でもあった。
ある夜、両親が不在となり、少年とベビーシッターが二人きりで過ごすことになる。期待と不安が入り混じる時間のなか、リビングの様子に違和感を覚えた少年は、こっそりと様子をうかがう。すると、そこには見知らぬ大学生たちが集まっており、ベビーシッターと親しげにふるまっていた。
和やかだった雰囲気は突如として一変する。一人の大学生が包丁で他のメンバーを刺し殺し、血を器に集めようとする様子が目に飛び込む。悪魔的な儀式の気配に少年は戦慄するが、さらに衝撃的だったのは、その血が目的では終わらず、少年自身の体から採血しようとする流れだった。腕に注射器が刺され、意識が朦朧とする中、薬を盛られた少年はそのまま気を失ってしまう。
目が覚めると、身体は縛られ逃げ場もない。なんとか機転を利かせて警察に通報し、1人の警官が到着するが、大学生たちは容赦なくその警官をも殺めてしまう。少年は決死の覚悟で家の中を逃げ回り、時に階段から突き落としたり、爆弾で大学生の1人を吹き飛ばしたりと、必死の抵抗を続ける。
追い詰められながらも地下室や木の上といった場所での攻防が続き、ついにはベビーシッター本人までもが拳銃を手にして追いかけてくる。信頼していた相手が自分の命を狙ってくるという恐怖のなか、少年は同級生の女の子の家へと逃げ込み、もう一度自分の家に立ち向かう決意を固める。
再び自宅に戻った少年は、ベビーシッターに銃で脅されながらも、彼女が大事にしていた悪魔の書を燃やそうとする。ベビーシッターは「一緒に続けていこう」と語りかけるが、少年はそれを拒み、車を家に突っ込ませて彼女を押し潰す。最後には駆けつけた警察によって救出され、静かに夜は明けていく。
本作はホラーとコメディの間を軽やかに揺れ動く独特のトーンがあり、唐突な展開や突飛な描写も含めて、テンポよくエンターテインメントとして楽しめる作りでした。とくに出血描写や演出のテンションが非常に高く、ジャンル映画としての潔さも好感を持ちました。
ただし、個人的には事件が起こるまでの導入部に少々ゆるやかな印象も受けました。主人公とベビーシッターが仲良く過ごす時間が丁寧に描かれる一方で、その間に大きな動きが少なく、序盤の展開としてはやや控えめに感じられた部分も。
また、大学生たちが比較的あっさりと倒されていく構成は、テンポのよさにつながる一方で、やや印象が薄くなってしまったようにも思われます。しかしながら、それぞれのシーンにきちんと工夫が施されており、90分という時間のなかで緩急をつけながら最後まで飽きずに鑑賞できたのは確かです。
ジャンルに忠実でありながら、子どもの視点で悪夢のような一夜を描いた1作。気軽に観られるホラーコメディとして十分に楽しめました。
☆☆☆
鑑賞日:2023/04/06 NETFLIX
監督 | マックG |
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脚本 | ブライアン・ダッフィールド |
出演 | ジュダ・ルイス |
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サマラ・ウィーヴィング | |
ベラ・ソーン | |
ロビー・アメル | |
ハナ・メイ・リー | |
エミリー・アリン・リンド | |
アンドリュー・バチェラー | |
レスリー・ビブ | |
ケン・マリーノ |