映画【アミューズメント・パーク】感想(ネタバレ):老いとは何か?年齢差別と無関心を描いた衝撃の短編映画

THE AMUSEMENT PARK
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●こんなお話

 年齢差別や高齢者虐待が当たり前のアミューズメントパークの話。

●感想

 主演俳優がカメラに向かって真顔で話しかけてくる。「この映画は年齢差別と高齢者虐待を描いている。そして人は誰でも必ず老いる」。そんなセリフから始まる本作は、たった60分なのに心が重たくなるほど濃く、痛烈でした。

 真っ白な部屋に傷だらけの老人が1人。そしてそこへ、全く同じ顔をした清潔感のある綺麗な老人がやってくる。外の世界に出てみたいと言う彼に対し、ボロボロの老人は「外に出るな」と静かに警告する。しかし綺麗な老人はその忠告を無視して外の世界へ向かう。

 外の世界は一見すると遊園地のように楽しげな場所。でもその裏では年齢や収入、健康状態で厳しく分断された社会が広がっている。アトラクションすら乗れる人と乗れない人が分かれ、ぶつける車に乗ってトラブルが起これば、すべて老人の責任にされる。警官の対応も、老人に対してあからさまに冷たい。

 富裕層の老人は快適に過ごしている一方で、貧困層の高齢者は見下され、誰にも助けられない。占い館で未来を知ろうとする若者が見せられるのは、社会保障もなく、税金や生活費に苦しむ老人の姿だった。未来が明るいはずの若者にも、この現実は直撃する。

 暴走族に襲われ傷だらけになった老人は病院に行くも、長蛇の列に並ばされ、治療はただの応急処置。いたわりも、寄り添いもない。

 そんな彼が、絵本を読んでほしいと声をかけてきた少女に「三匹の子ぶた」を読み聞かせる一幕もある。でも少女もすぐに去ってしまう。やさしさがほんの一瞬現れては消えていく。

 そして老人は再び真っ白な部屋へ。そこで、またもや綺麗な老人がやってきて「外の世界に行きたい」と言い出す。ボロボロの老人は、また止めようとする…。この繰り返しが示すのは、社会の無関心が生み出す残酷なループなのかもしれない。ラストは再び主演俳優が登場し、カメラに向かって「人は誰しも老いていく」と静かに語っておしまい。

 たった1時間の作品なのに、ひたすら高齢者が差別され、痛めつけられていく描写が続き、見ていて本当に辛かったです。映像的には静かで、過剰な演出もないのに、心にズシンと重くのしかかります。人間の冷たさ、無関心さ、そして老いという避けられないテーマを突きつけられ、正直げんなりと落ち込む作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2024/01/20 Amazonプライム・ビデオ

監督ジョージ・A・ロメロ 
原案ウォルトン・クック 
出演リンカーン・マーゼル 
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