ドラマ【ナルコの神】感想(ネタバレ):南米スリナムで描かれる潜入サスペンスと信頼の裏側

The Accidental Narco
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●こんなお話

 南米のスリナムという国で麻薬密売をする組織に潜入した民間人の話。

●感想

 韓国で水産加工業を営んでいた主人公が、新たな販路を求めてたどり着いたのは南米のスリナムという国だった。目的は高級食材であるエイの輸出販売。そのための取引や輸送をようやく形にし、現地でも順調な滑り出しかと思われたが、発送した商品に麻薬が仕込まれていたことが判明。あまりにも唐突な展開に主人公は困惑しつつも、実は裏で麻薬密売を行っていたという牧師の存在が明らかになる。

 この牧師、表向きは慈善活動に熱心で人望もあり、現地でも敬意を集めていた人物だった。しかしその裏の顔は巨大な麻薬ネットワークを操る首謀者で、しかもその活動を隠すために宗教の力を利用していたのだった。信仰と犯罪の交錯がじわじわと浮かび上がるなか、主人公は韓国の国家情報院に拘束され、半ば強制的に協力を要請されることになる。

 そこからは、国家情報院の支援を受けながら、麻薬組織の内側に潜り込むという危険なミッションが始まる。さらに中国系の裏社会の存在も絡んでくることで、単純な潜入捜査ではなく、三者四者が入り乱れる複雑な構図が展開されていく。主人公は素人ながらも危機的状況に何度も直面し、そのたびにとっさの判断と行動で窮地を乗り越えていく姿が描かれる。

 特に印象に残るのは、牧師に計画がバレているのかどうか、見透かされているのか否かという不安が常に付きまとう構成になっている点で、視聴者側も登場人物たちと一緒に緊張感を共有できるつくりが見事でした。国家情報院も一枚岩ではなく、主人公をただの駒として扱っているような冷酷さも感じられ、その不安定なバランスが終始スリリングな展開を生んでいました。

 さらに、中盤以降は主人公自身が国家情報院に頼らず、自らの意思でチャイニーズマフィアと接近して事態を動かしていく流れもあり、単なる巻き込まれ型の人物ではなく、サバイバル能力を備えた人物として描かれていくのが面白かったです。終盤にはもう一人の内通者の存在が唐突に明かされるというサプライズもあり、最後の最後まで緊張感が持続していました。

 クライマックスでは、麻薬王である牧師を捕らえるため、主人公がまるでアクション映画のヒーローのような動きを見せ、カーチェイスに銃撃戦、殴り合いまでこなしてしまうという怒涛の展開が続きます。普段の生活では到底想像できないような動きなのですが、その行動に至るまでの蓄積があるため、どこか納得してしまうような力強さも感じました。

 全体として、宗教の権威と国家権力の裏側を絡めながら、個人が生き抜く姿を描いた社会派サスペンスでありながら、エンタメとしてのリズムもきちんと保たれているのが魅力的でした。特に国家の腐敗や、宗教というシステムの曖昧さに目を向けさせられる部分もあり、見終えたあとには思わず社会の仕組みについて考えさせられました。

☆☆☆☆

鑑賞日:2023/02/19 NETFLIX

脚本ユン・ジョンビン
出演ハ・ジョンウ
ファン・ジョンミン
パク・ヘス
チョ・ウジン
ユ・ヨンソク
チャン・チェン
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