映画【リアル鬼ごっこ 2015】感想(ネタバレ):想像の外側へ連れていかれる快感の摩訶不思議体験

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●こんなお話

 松竹の映画で全開の園子温監督作品の話。

●感想

 冒頭から容赦のない惨劇が続き、何が始まるのかと息を呑む展開。突然の大虐殺に観客は否応なしに物語へと引き込まれていきます。息つく間もない映像と唐突な設定が積み重なり、現実離れした世界が目の前に広がっていく中、何が起きているのかを把握する暇もなく、ただただ映像の奔流に飲み込まれていくような始まりでした。

 しかし、タイトルにもある“鬼ごっこ”はなかなか始まらず、物語は想像とはまるで違う方向へと進んでいきます。開始から四十分ほど経過しても、肝心の“鬼ごっこ”的な場面が訪れないことで、これは一体何の話なのかと観ているこちらも不思議な感覚に陥りました。まるで悪夢を見ているような、不条理さが繰り返される時間の中で、誰が誰を追っているのかもわからなくなっていき、混乱とともに妙な笑いすらこみ上げてきます。

 常識では測れない展開の連続に、お腹を抱えて笑ってしまう場面も多く、ある意味で“ありえなさ”を極めた演出がクセになる部分もありました。唐突に起こる惨劇、シーンの切り替わり方も極端で、今まで積み上げられてきた流れが一瞬で切り捨てられるような編集も多く、観る者の思考の軸を奪っていくような構成です。そうした大胆さに驚きながらも、どこかクセになる魅力が潜んでいるように感じました。

 映像面では、特に空撮が印象的で、逃げ惑う人々の姿を高所からとらえることで、この世界がいかに異常で、そして広大で、逃げ場のない空間なのかを示していました。その不気味さと美しさが入り混じった画作りには、不思議な魅力があり、幻想的な雰囲気すら漂います。現実と非現実の境界が曖昧になっていくような感覚が、画面を通してじわじわと伝わってきました。

 クライマックスに向かうにつれて、若干の間延びを感じた部分もありました。特に歩き続ける場面が続くあたりでは、少し退屈に思えたのも正直なところです。ただ、そうした時間の流れの緩やかさも、もしかするとこの作品の中では意味のある“間”だったのかもしれません。常識的な物語展開からは逸脱しているものの、その破綻すらも作品の個性として感じられるところに、この映画の面白さがあるように思います。

 ストーリー自体は一言で言えば“めちゃくちゃ”ですが、それでもなぜか最後まで観てしまう不思議な吸引力があります。気づけばその世界に囚われていて、もっとこの混沌とした空間を見ていたくなるような、妙な魅力がありました。決して万人受けするタイプの作品ではないと思いますが、常識に縛られない映画を求めている方には一度体験してみる価値がある作品です。

☆☆☆

鑑賞日: 2015/11/21 Blu-ray

監督園子温 
脚本園子温 
原作山田悠介
出演トリンドル玲奈 
篠田麻里子 
真野恵里菜 
桜井ユキ 
高橋メアリージュン 
磯山さやか 
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