●こんなお話
空母・飛龍をメインに連合艦隊のもろもろの話。
●感想
昭和16年末、日本海軍は真珠湾奇襲作戦を開始し、南雲機動部隊が単冠湾から密かに出撃する。空母飛龍には北見中尉をはじめとする若い搭乗員が乗り込み、整備員や通信員も休む間もない準備に追われていた。艦隊は北太平洋を南下し、12月8日未明に第一次攻撃隊が発艦。北見たちは編隊を整え、真珠湾の艦隊と飛行場を爆撃して大きな戦果を得る。
作戦後、北見は短い帰国を許され、母と婚約者と再会する。家庭を築く未来を思い描きながら過ごすが、突然の帰還命令で休暇は終わりとなり、再び母艦へ向かうことになる。海軍は南方作戦やインド洋での作戦を進め、各方面で戦果を挙げていくものの、やがて戦局は徐々にアメリカの反撃へ傾いていく。
その後、日本は太平洋の主導権を狙ってミッドウェイ島攻略を決定する。山口多聞司令や南雲長官のもと、「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」を中心とする機動部隊が進撃。北見は飛龍航空隊の一員として出撃準備に入る。6月5日未明、日本軍はミッドウェイ島への空爆を開始するが、アメリカ軍は暗号を解読しており、迎撃態勢を整えていた。
島を攻撃した日本機が帰投する途中、米軍急降下爆撃隊が艦隊を捕捉し、「赤城」「加賀」「蒼龍」が立て続けに炎上する。飛行甲板は火に包まれ、指揮官たちは退去を決断する。唯一残った飛龍では山口多聞が反撃を命じ、北見ら生き残った搭乗員が米空母への攻撃に向かう。攻撃は一部成功するが、ほどなく米軍第二次攻撃隊が飛龍を襲撃し、飛龍も大火災に沈む。
山口司令は退艦を促されながらも重傷者を置いてはいけないと判断し、艦と運命を共にする道を選ぶ。北見たちは駆逐艦に収容され、後方へ撤退する。その後、彼らは情報を守るための措置として軟禁状態となり、再び前線へ向かう運命を辿っておしまい。
物語は真珠湾攻撃から始まり、勢いに乗る連合艦隊が次第に過信を帯びていく中で、ミッドウェイ海戦へ向かう流れが重厚に描かれており、その歴史の節目を大きなスケールで体験できる作品だと感じました。役者の方々の落ち着いた演技と、空母を中心とした作戦行動の丁寧な描写が見どころで、どのように艦を動かし航空機を送り出すのかが手に取るように理解できる点も興味深かったです。
ミッドウェイ海戦のパートはかなり長く感じましたが、ここまで詳細に時間経過と作戦の流れを追った映像作品は珍しく、敗北へ至る構造を知るうえで貴重だと思いました。また、敗戦後に生き残った将兵が情報漏洩の恐れから南方へ転属させられる描写には、戦争の過酷さが静かに滲んでいたように思います。
一方で、山口司令と加来艦長の幽霊のような存在が登場する演出については個人的には少し踏み込みすぎている印象を受けました。さらに、当時の軍人の役職や背景をある程度知っていないと人物関係がつかみにくい場面も多く、歴史への予備知識が必要な作りになっていると感じました。
とはいえ、空母戦の臨場感や乗組員たちの思考と緊張感を体感できる構成には強い魅力があり、戦争の流れと人間の選択がどのように絡み合っていたのかを改めて考えさせられる作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2012/04/05 DVD 2025/12/03 U-NEXT
| 監督 | 松林宗恵 |
|---|---|
| 特技監督 | 円谷英二 |
| 脚本 | 橋本忍 |
| 国弘威雄 |
| 出演 | 夏木陽介 |
|---|---|
| 佐藤允 | |
| 瀬木俊一 | |
| 八色賢典 | |
| 上村幸之 | |
| 太刀川寛 | |
| 鶴田浩二 | |
| 小泉博 | |
| 三船敏郎 | |
| 田崎潤 | |
| 池部良 | |
| 土屋嘉男 | |
| 藤田進 | |
| 河津清三郎 | |
| 上原謙 | |
| 加東大介 | |
| 三橋達也 | |
| 小林桂樹 | |
| 宝田明 | |
| 堺左千夫 | |
| 上原美佐 | |
| 志村喬 |


