映画【潜水艦イ-57降伏せず】感想(ネタバレ):艦長の決断と潜水艦乗りたちの苦悩を描いた迫力の戦争ドラマ

Sensuikan I-57 kofuku sezu
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●こんなお話

 太平洋戦争末期に特殊任務の潜水艦の話。

●感想

 密命を帯びた潜水艦が、女性一人を乗せて戦うという物語の設定だけで、非常に熱く心を惹かれます。潜水艦内部の厳しい緊張感と戦闘シーンの間に、時折水雷科の隊員たちによるコミカルな場面が挟まることで、物語に緩急がつき、観る者に印象深い体験を与えています。戦いの緊張とユーモアが絶妙なバランスで混ざり合っているのが魅力のひとつです。

 物語の中で、外国人女性が潜水艦に乗り込んだことによって、乗組員たちの間に微妙な緊張感が生まれていきます。彼女と乗組員たちの関係性の変化は、作品の大きな見どころです。特に、女性のために全員が氷を作るために努力するシーンは温かく、最初は日本の軍人たちを嫌っていた彼女が、次第にその考えを変えていく過程が丁寧に描かれていて、非常に心に残りました。ただ、現代の視点から見ると、敵艦との戦闘シーンの迫力がやや物足りなく感じられる部分もありました。

 また、主人公である艦長の心理描写には少し理解が難しい点がありました。物語の始まりで「日本が和平をするなんてありえない」と拒絶する艦長が、なぜすぐに任務を受け入れたのか、その心情の変化があまり描かれていません。さらに、物語の終盤で外交官を連合国側に引き渡し、第二種軍装に着替えたうえで降伏せずに敵艦へ突進するという勇ましい行動も、彼の内面からくる動機が曖昧で理解に苦しむ部分がありました。特に、外交官の娘が「生きてください」と言った言葉に対して、艦長があのような反応を見せるのは少し不可解に感じました。

 それでもなお、モノクロ映像ならではの迫力ある映像美や、潜水艦乗りたちが過酷な暑さや狭い空間、閉塞感に耐えながら過ごす日常がリアルに描かれている点は見どころです。緊迫した状況の中での人間ドラマや潜水艦の内部の息苦しい空気感を味わうことができ、そこにこそこの作品の魅力が詰まっています。

☆☆☆☆

鑑賞日:2012/04/01 DVD

監督松林宗恵 
特技監督円谷英二 
脚本須崎勝弥 
木村武 
原作川村六良 
出演池部良 
三橋達也 
三島耕 
平田昭彦 
岡豊 
土屋嘉男 
久保明 
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