●こんなお話
交通事故で目覚めた主人公が12時間ごとに身体が変わって精神だけ同じで自分が何者でどうしてこうなったのかを探っていく話。
●感想
交通事故によって全身ボロボロの状態で目を覚ました主人公。目を覚ました彼に、ホームレスの男性が声をかけてくるものの、自分が誰なのかという記憶が一切ない状態。持ち物を頼りに過去の手がかりを辿ろうとしますが、突然周囲の風景がぐにゃりと歪み、次の瞬間にはまったく別の場所へと転移してしまいます。しかも、ガラスに映る自分の顔を見て驚愕。そこに映っていたのは、まったく見覚えのない他人の顔。
なぜ自分がこうなってしまったのかを探ろうとする主人公。しかしその矢先、突然襲撃を受け、どうやら彼を巡る陰謀があることがわかってきます。当初は人格が入れ替わり、場所も変わるという不可解な状況に戸惑いすぐに逃げ出そうとするものの、やがて自身が謎の組織の関係者であることを知る。さらに、謎の女性からも命を狙われるようになりますが、彼女こそが主人公の恋人であることが判明します。人々が皆、”元の自分”を探している中、主人公もまた自身の肉体を探し始めます。
この物語の面白さは、「12時」と「24時」を境に魂が別の肉体へと入れ替わるという斬新な設定にあると思いました。しかもその入れ替わり先は、主人公を追ってくる敵側の人間たち。つまり、さっきまで敵だった者が突然主人公の視点で物語を追い始めるという構造になっており、見ている側も混乱しながらも、引き込まれる展開が続きました。
最初は何が起こっているのかわからず戸惑うものの、外部からのアクションによって新たな情報がもたらされ、それがきっかけとなって次の展開が始まっていくため、退屈することなく物語を楽しむことができました。
また、アクションシーンも非常に魅力的で、「ジョン・ウィック」さながらの格闘術やガンアクションがふんだんに盛り込まれており、見応えのあるシーンが続きます。
物語が進むにつれ、恋人である女性は、主人公の組織が麻薬密売に関わっていることを独自に調査していたことが明らかに。内通者からUSBメモリを託され、それによって命を狙われることに。ヒロインも闇医者などを調査するうちに命を狙われ、主人公に助けられる場面も。顔が違うため、彼女は彼を信じることができず、戸惑いながらも少しずつ信頼を寄せていきます。
物語終盤では、車載カメラや監視映像などから徐々に関係者たちが真実に近づき、主人公の「本当の身体」を探す動きが活発になります。ようやく自分自身を見つけた主人公が、自身の顔に触れた瞬間、それまでの謎が一気に明らかになるという回想シーンは、やや強引ながらも非常にスッキリとした「答え合わせ」となっていました。
クライマックスでは、恋人を人質に取られた主人公が敵の本拠地に殴り込みをかけ、ボスと一騎打ちに。かなり撃たれてもなかなか死なない演出は多少ご都合主義的な部分もありますが、スリル満点の展開だと思います。
ただし、設定の細かい部分に疑問が残る点もあります。例えば「きっかけとなる事件の現場にいた人に乗り移る」というロジックがやや曖昧で、なぜ女性には乗り移らないのかという説明もありません。さらには、いきなり登場した日本人キャラクターが、妙な日本語を話してすぐに退場するなど、細部にもう少し説得力が欲しかったところ。バディものとして描かれていたホームレスの男性も、最後は主人公の身体を車に乗せて去るというややあっさりとした幕引きで、余韻がやや物足りない印象を受けました。
また、「麻薬の影響で魂が入れ替わる」という設定であるにも関わらず、他の麻薬使用者にはそうした症状が出ていないなど、やや整合性に欠ける面も気になりました。
とはいえ、作品を一度観終わると、最初から見直して伏線を確認したくなる仕掛けが多く、主人公が次々と敵に乗り移ることで、誰が倒されても罪悪感を感じにくいという作劇上の工夫も上手く機能していたと思います。スピーディな展開と手に汗握るガンアクションにより、最後まで退屈せずに楽しめたエンターテインメント作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2022/04/07 T・ジョイPRINCE品川
監督 | ユン・ジェグン |
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脚本 | ユン・ジェグン |
出演 | ユン・ゲサン |
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イム・ジヨン | |
パク・ヨンウ | |
パク・チファン | |
ユ・スンモク |