●こんなお話
不登校や非行の少年たちの更生施設の話。
●感想
ある日、屈強なジャージ姿の男たちが突然一軒家に乱入。暴れる男子高校生は取り押さえられ、両親も悩みながらも見送る形で彼は戸塚ヨットスクールに連れて行かれる。到着するといきなり檻に入れられ、そこには別の女子高生の姿も。彼女も家庭内暴力をふるい、親に見限られてここに送られた生徒だったらしい。
朝になると、規則正しい起床の合図から“学園生活”が始まる。生徒たちは反抗的な態度を見せるたびに暴力的な“指導”を受ける。男子学生は一度逃亡して警察に助けを求めるが、両親と校長が現れ「もう一度戻してくれ」と懇願し、結局スクールに戻されてしまう。
再び閉じ込められ、暴力を受ける中で「今が大事なときや、その表情や」と語りかける校長の言葉に少しずつ変化が生まれる。彼は練習に打ち込み始める。
一方で、目が不自由な両親が「金がないけど子どもを引き取りたい」と訴えに来る場面も。先生たちは「お金は何とかする」と答え、頑張っている子どもの姿を見せて、両親はその姿に涙を流す。
生徒が「このやり方はおかしい」と理論で反論しても、力で押さえつける校長。「世の中は無責任な評論家ばかり」と語る。
卒業が決まった生徒がうれしそうに旅立とうとする時、教員が「この学校が嫌だって言われるのは悲しい」とつぶやくと、校長は「誰かが悪役を引き受けなきゃならん。この生活を越えたら、どんな困難でも耐えられる」と語る。
そしてまた新たな生徒が親に連れられてやってくる。反応が薄く、まるで幽霊のよう。閉じ込められたその子は、やがて衰弱死。これが大きな問題となり、マスコミのバッシングや脅迫が続く。校長の妻も衰弱するが、校長の信念を聞いて「あなたがやらなきゃだめ」と急に支える側に変わる。
事件はさらに起きる。男子生徒が女子生徒に包丁を突きつけて暴れ、それを止めようとした教師が倒れてしまう。心臓マッサージで救われるが、女子生徒は家庭の事情で退学し、男子生徒は彼女を見送る。
その男子生徒の両親が「大学に入れたい」と退学を申し入れるが、校長は「もう親を超えた」としてそれを受け入れる。しかし、男子生徒は退学をやめて校長のもとに戻ってくきて「先生と一緒にヨットの練習をしたい」と笑い、信頼の中で訓練に励んでおしまい。
冒頭、少年が連れ去られ、タイトルがドーンと出るツカミは圧巻でした。暴力的な指導に抵抗しながらも、出会った少女との淡い恋。ビー玉を使った別れのシーンは感動的で、演出が今見ると古臭く感じましたが。むしろ味わいがあったと思います。
伊東四朗演じる校長の不気味さ、強靭な体格からにじみ出る威圧感は圧倒的。彼がただの狂気ではなく、親から見放された子どもたちを社会に戻そうと本気で思っていることが伝わってきました。その一方で、死者が出たことで迷う姿も人間的で印象的です。とはいえやはり今見るとやってることが無茶苦茶に感じて引いてしまう部分も。
自己責任を放棄し、すべてを他人のせいにする親や生徒たち。そんな彼らに体当たりでぶつかる大人たちの姿。問題児だった“ウルフ”と呼ばれる少年を中心にスクール生活を描いています。
暴力の是非は問われるが、人間の再生や教育の根本について深く問いかけてくる作品だったと思います。恋愛あり、衝突あり、成長ありの濃密な人間ドラマとして、今見ても惹きつけられる一作でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2013/03/25 DVD 2025/06/01 DVD
監督 | 西河克己 |
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脚本 | 野波静雄 |
原作 | 上之郷利昭 |
出演 | 伊東四朗 |
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小山明子 | |
平田昭彦 | |
牟田悌三 | |
辻野幸一 | |
香野百合子 | |
横田ひとみ |