映画【青いソラ白い雲】感想(ネタバレ):セレブ女子が東京でサバイバル!?笑って泣けるヒューマン・コメディ映画

aoisora
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●こんなお話

 東日本大震災の被災地で生き残った犬と何不自由なく育ったお嬢様の交流の話。

●感想

 主演を務める女性は長身でスレンダーなモデル体型であり、映画の冒頭で描かれるセレブな生活にしっくりと馴染んでいました。世間知らずなお嬢さまという設定にも自然と説得力が生まれていて、そのキャラクターを最初から魅力的に印象づけていたように思います。何不自由ない環境で育ち、表情にも純粋さとどこか浮世離れした雰囲気が漂っていて、物語の導入として非常に印象的なシーンでした。

 そんな彼女が、両親の離婚をきっかけにアメリカで生活することになりますが、旅立った直後に起きたのが東日本大震災。帰国を決意し、日本へと戻ってくるのが物語の大きな転機となります。再び日本の地に降り立った彼女が、巨大なガイガーカウンターを手に各地の放射線量を測るという場面には驚かされました。少し過剰にも見えるその描写に戸惑いつつも、外から見た日本という視点で描かれていた点が興味深く、海外で暮らしていた彼女なりの不安や心配が表れていたのだと感じました。

 しかし、戻ってきた日本では事態はさらに厳しく展開していきます。父親が詐欺罪で逮捕されてしまい、住む場所さえも失うことになります。やくざに家を追い出され、東京の街で着の身着のまま放り出されるというまさかのサバイバル生活に突入します。セレブな暮らしから一転して過酷な現実に晒されるギャップが強烈で、ここから映画はコミカルなタッチを交えながら物語を進めていきます。

 全編を通してゆるいコメディとして描かれているこの作品では、登場人物たちが放つ軽妙なセリフや展開に思わずクスリと笑ってしまう場面も多く、突っ込みどころを含めて楽しめる空気が漂っています。音楽プロデューサーが実は元アイドルだったり、その人物がゲイでマネージャーと昔付き合っていたことが明かされたりと、急展開が続くストーリーには驚かされました。さらに、かつてのアイドル時代のファンだったおばちゃんが突然現れたり、かつてはレディー・ガガを批判していた友人がガガ風のパフォーマンスを始めたりと、場面ごとにユニークなエピソードが盛り込まれています。

 ときには代理母の話まで飛び出すなど、展開としては自由奔放でやや詰め込みすぎにも感じられる部分はありますが、それがまたこの映画ならではの魅力になっていました。現実の厳しさに打ちひしがれるでもなく、かといって全てが上手くいくわけでもない世界で、登場人物たちがなんとか前に進もうとする姿が描かれています。

 中でも印象的だったのは、主人公が土手で歌うシーン。口ずさまれる「黙って俺についてこい」という歌詞が、観ている側の胸にもストレートに響いてきました。どんなに辛い状況でも、笑って前を向いて進んでいこうというメッセージが力強く、温かさを持って伝わってきた瞬間です。この歌に象徴されるように、本作は「今できることを自分なりにやっていけばいい」という励ましを含んだ映画であり、観終わった後には、元気と優しい気持ちをもらえる一本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2013/07/14 DVD

監督金子修介 
脚本金子二郎 
萩原恵礼 
金子修介 
出演森星 
大沢樹生 
渡辺裕之 
畑中葉子 
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