映画【少年H】感想

☆☆☆☆

●こんなお話

 太平洋戦争時の神戸を舞台にした少年の話

 詳しいあらすじ解説はMIHOシネマさんの映画ブログにて

●感想

 主人公はセーターに【H】とイニシャルを編み込まれ、父親は紳士服の仕立てをやっていてフランス人、ドイツ人、アメリカ人、ユダヤ人といろいろな外国人がお客さんで「言葉は違っても、人間は人間や。違いはない」と。現代よりも更に閉鎖的な時代であったろう時代で現代的な考えの持ち主。主人公は絵が得意で戦艦の絵や景色を書くのが得意で、近所の優しいお兄ちゃんからレコードを教えてもらったり映画を見せてもらったり。母親はクリスチャンで教会にも行ったり。そこで絵葉書でアメリカには大きなビルが建ち、車もいっぱい走り地下鉄は日本の何十年も前からあると知ったりアメリカの大きさにも触れたりします。

 いろいろな考えを吸収して行く序盤。ところが時代が主人公にとっては窮屈な方向へと向かっているらしい。レコードを教えれくれたお兄ちゃん、映画を教えてくれたお兄ちゃん。優しかったお兄ちゃんたちがいなくなり、戦艦や景色を書くとスパイ行為と間違われるから書いたらあかん、と。クリスチャンであることから学校でもいじめられたり。

 真珠湾攻撃が行われ、米英と開戦が始まると主人公の学校でも軍事訓練が行われます。ここで、二宮金次郎像も出征するということになり、みんなで万歳三唱するところなんかは今の時代から見ると凄いことをやっていたんだと興味深く見ることができました。

 現代的な考えの主人公一家が考えの違う多数派の人たちの中で苦労して生きていく。という戦争ものでよくある内容っちゃ内容ですが。この映画のよかったところは、そんな主人公たちが苦しい状況の中で悩み、その悩みを家族でぶつけあい成長していくというところに感動しました。そして説教くさくなくそれをやっているのもよかったです。特にお父さんも主人公の悩みをぶつけられても、突き放すでもなくやたらと説教じみたことで説くのではなく。一緒に悩み適度な距離感で主人公の少年と接する。その距離感がよかったです。

 そしてドゥーリトル空襲があり、主人公は「新聞やラジオは嘘ばかりや」と思っていますが。そういう事も言ってはならず。学校の先生は鉄拳制裁、近所の人たちも天下の皇軍が負けるはずがないと勢いづく。学校の先生にも優しい先生がいて、主人公の絵の才能を誉めてくれる人もいたり。

 神戸大空襲の迫力たるや凄くて、そんな中、ナパーム弾が降り注ぐ中「綺麗やなぁ」と見ている主人公のどこか外野から見てる感じというのもよかったです。実際もたぶんそうなんだろうなと思いました。そしてあっという間に火に包まれ危機を迎える。この空襲シーンから涙が止まらなくなりました。「どうしてこの子がこんな目に遭わなければならないんだろう。この少年たち、この町に住む人たちに何の罪があるんだろう」と戦争を憎む。戦争を起こした人たちを憎む。という気持ちになって見てました。

 焼野原になった神戸、そして終戦。すると今までバリバリの軍国主義だった大人たちが米兵に頭をへいこら下げ、「これからは資本主義だ、民主主義だ」と180度変わる。それに戸惑いながらも大人たちに優しく接する主人公に泣けます。
 1番泣けたのは、主人公が「戦争が終わってよかった」と同級生の前で言うとその同級生はいきなり主人公を殴る。この同級生は父親が戦争へ行って帰ってこず、母親は空襲で重体だ、と。同級生は殴ったことを謝り泣き、主人公も同級生を抱きしめ泣く。このシーンはさらっと流され、音楽とかで盛り上げるわけでもないのに、涙があふれてきてしまいます。戦争によって、こんな思いをしなければならないのかと。

 終戦後も家がなくなり、学校で生活することになり。そこで主人公たちだけお米があり周りがない。その時、お米を周りに分けるべきか自分たちで食べるべきか。主人公は悩みます。ここでの母親と主人公のぶつかりあいもよかったです。自分だったらどうするだろう? どっちの意見も正しい気がする。
 そして、主人公はまた考え出す結論。その結論の背中を優しく押す父親。このラストも素晴らしかったです。決して甘やかすわけでもなく突き放すでもなく、自分で悩んで考えて出した結論を尊重する父親。

 戦争に振り回される家族の話ですが、淡々と描いていき仰々しく感動的に盛り上げようというわかりやすい演出とかはないのに。少年が時代の波に必死に悩み抗い生きていく姿は感動的でした。主人公の少年を演じる少年の演技も素晴らしかったです。決して深刻やふさぎ込むことなく、単純に「どうしていけないんだろう? どうしたらいいんだろう」とう~ん……と様々な問題について考え実行する姿が悲惨な時代だけど決して暗い気持ちにさせず明るい気持ちにさせてくれつつも泣かせてくれて、困難な状況の中でも自分の信じる道を進むんだと物語でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2013/04/11 試写会

監督降旗康男 
脚本古沢良太 
原作妹尾河童
出演水谷豊 
伊藤蘭 
吉岡竜輝 
花田優里音 
小栗旬 
早乙女太一 
原田泰造 
佐々木蔵之介 
國村隼 
岸部一徳 
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