●こんなお話
生物兵器がスキー場に隠されて温度が上がったら流出しちゃうってんで、何とか探し出そうとする話。
●感想
冒頭で、突然解雇された研究員が逆恨みから生物兵器を盗み出すという設定はなかなか興味深いものでした。その生物兵器はスキー場に隠されたまま、犯人が帰り道で交通事故に遭い亡くなってしまうため、どこにあるのかまったくわからないという状況が物語の発端となります。犯人が早々に亡くなってしまうことで、生物兵器の行方を追うという意外性のある設定には、最初のうちは期待感が膨らみました。
しかし、その後の展開は生物兵器を巡る緊迫したシリアスなドラマを期待していたのに反して、まさかのコメディ作品として話が進んでいきます。コメディ映画であること自体は問題ありませんが、残念ながらその笑いの部分が非常に滑っており、観客としてはあまり楽しめないものでした。映像の質も安っぽく、映画館の大画面で見ると逆に不快感を覚えるレベルに感じられました。特に、この作品の目玉とも言えるムロツヨシさんと大島優子さんによるチェイスシーンは迫力に欠け、動きと声のタイミングが合っていないため、見ていて違和感を覚え、気まずい雰囲気になってしまっていました。
物語の中心であるはずの生物兵器を探す行動に関しても、主人公の阿部寛さんは途中で怪我を負い、ほとんど動かず何もせずに終わってしまいます。実際に生物兵器を探すのは大倉忠義さんと大島優子さんで、そのシークエンスがメインとなりますが、その流れも中途半端に感じられました。また、主人公の息子や地元の中学生たちのエピソードも同時に描かれますが、それが物語に深みを与えるどころか散漫な印象を与えてしまいました。生物兵器の真相として示される妹のインフルエンザによる亡霊的な恨みのエピソードも荒唐無稽で、結末においても観客がスッキリするようなカタルシスはほとんど感じられませんでした。
全体を通して、この作品は約2時間の映画としての完成度は低く、むしろ深夜ドラマとして何気なく観る分にはまあ悪くない、という程度の印象でした。映画館での鑑賞には向いておらず、期待を大きく裏切られる内容でした。もっと練り込まれた脚本や映像演出があれば、物語の持つ可能性を引き出せたのではないかと思います。
☆
鑑賞日: 2017/10/20 DVD
監督 | 吉田照幸 |
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脚本 | ハセベバクシンオー |
吉田照幸 | |
原作 | 東野圭吾 |
出演 | 阿部寛 |
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大倉忠義 | |
大島優子 | |
ムロツヨシ |
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