映画【嘆きのピエタ】感想(ネタバレ)

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●こんなお話

 孤独の主人公と彼の前に現れた母親を名乗る女性の話。

●感想

 主人公は借金の取り立てをしていて、町工場で働く職人さんたちをこれでもかと容赦なくて悪魔のような男。序盤の30分のこの取り立てのシーンの連続は、直接的なバイオレンス描写はないのにめちゃくちゃ不快なシーンの連続で。老婆の前でビンタされる息子だったり、微妙な高さのビルから突き落として、折れた足をされに蹴ったりするときのゴリっという音が見ていられないです。
 母親だと名乗る女性が現れて、レイプされようが主人公に尽くし始める。母親に捨てられた主人公。この男、アイラインを引いていてニワトリやらウナギやらウサギを生きたまま連れ帰ってきて。まさに捨てられた野獣のような男。

 最初は信じてなかった主人公は、取り立てに失敗して母親に遺書を残して自殺した男を見て。女性と連絡を取り、母親だと信じ始める生活が始まる。
 愛を知らずに育った主人公は母親から愛を与えらえて、ひたすら甘える。そして守るべきものができたので、当然今まで違って弱点にもなってしまう。

 序盤でひたすら虐待していた人たちから今度は復讐される恐怖に襲われながら、母のために行動する主人公。当然、母からの愛を受けた主人公は取り立てが今までと変わって上手くできなくなる。
 そして当然、母親が突然現れた動機があるわけで。その動機が明らかになる後半、めちゃ怖かったです。 
 母親が主人公にする行動。主人公にある事を気づかせる、本当の悲しみを。その時、母親がクライマックスで流す涙は主人公に対しての涙なのが凄いです。

 母と息子の物語を描きつつ、物語の背景は韓国の資本主義の問題を映していて、美しい川を挟んでの高層ビルが乱立してそのすぐ下には工場がたくさんある。
 そして主人公が取り立てに行くと、その相手が同じことを口にします。「金とは何だろう? 命とは何だろう?」。

 生理的なバイオレンスで不快だし好き嫌いが分かれそうな映画ですが。表面的なことだけを描く話ではなく、行間を読む相変わらずのキム・ギドク映画でよかったです。それでいて商業映画としてもしっかりサスペンスな作りもしっかりしていた映画でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2013/07/25  Bunkamura ル・シネマ

監督キム・ギドク 
脚本キム・ギドク
出演チョ・ミンス 
イ・ジョンジン 
ウ・ギホン 
カン・ウンジン 
クォン・セイン 
チョ・ジェリョン 
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