●こんなお話
ロボットと怪獣が殴りあう話。
●感想
怪獣が海底の裂け目から出現するようになった世界。人類はイエーガーと呼ばれる巨大ロボットを開発して対抗します。何度も勝利を重ねたことで、怪獣はかつてのような「恐怖」ではなく、「また出てくる敵」として受け止められるようになった時代。そんな中、イエーガーを操縦する兄弟パイロットが今日も出撃。主人公は兄と共に「また勝ってやる」と意気込んで戦場へ向かいますが、予想外の強敵との戦いで兄は命を落とし、主人公も重傷を負ってしまいます。
それ以降、主人公はイエーガーを降り、ひっそりと日雇い労働で生計を立てる日々。そんな彼のもとに、かつての司令官が訪れます。人類最後の望みとして、新たな計画への参加を要請され、主人公は再びパイロットとしての道を歩み始めます。計画の内容は、怪獣の出現源である海底の裂け目に核爆弾を送り込んで完全に閉じてしまおうというもの。そのためには、イエーガーで深海へ向かう任務が必要となります。
新たにパートナーとして選ばれたのは、過去にトラウマを抱えながらも強い意志を持つ女性。彼女との信頼関係を築くため、訓練を積み重ねていきますが、他国から参加するロシアや中国、オーストラリアのパイロットたちとの摩擦や衝突も描かれていきます。その一方で、怪獣の生態を研究する科学者たちが登場し、彼らは怪獣の脳と“ドリフト”という手法で意識を共有しようと試みます。これにより、怪獣側にも明確な意図があり、人類を狙っていることが判明します。
そんな中、香港では怪獣の身体のパーツを売買する業者が暗躍しており、科学者たちはその情報を頼りにさらなる調査を進めていきます。やがて香港に巨大な怪獣が出現し、複数のイエーガーが迎撃に向かいますが、戦いは一筋縄ではいきません。仲間たちは次々と倒れ、主人公と新たな相棒が操縦するイエーガーが決死の活躍を見せて辛くも怪獣を撃退します。
この戦いの中で得られた怪獣の脳を通じて、科学者はある重大な事実に気づきます。爆弾を裂け目に投下するだけでは通過できず、怪獣の身体を通してしかゲートに侵入できないということ。つまり、怪獣の死体ごと深海に突入しなければ作戦は成功しない。
その後、再び怪獣が出現し、司令官が自ら操縦するイエーガーで自爆を決行。残された主人公たちもまた、怪獣の死体と共に裂け目に突入し、爆弾を起動させます。深海の闇の中で果たされた作戦によって、怪獣の巣は破壊され、おしまい。
全体として、巨大ロボットと怪獣というビジュアル面のインパクトが中心に据えられた作品ですが、怪獣のデザインにはバリエーションが少なく、ナイトシーンでの戦闘も多いため、それぞれの特徴を判別しづらい部分もありました。怪獣たちは倒すべき存在として描かれており、どこか愛嬌や個性を感じさせるような工夫はあまり見受けられません。
冒頭では世界観の説明と主人公の過去を描く導入部分が展開され、その後、仲間との出会い、信頼関係の構築、トラウマの克服などが続きます。特にロシアや中国、オーストラリアのチームメンバーたちの登場に時間を割きつつも、彼らの描写はあくまで主人公を支える存在として整理されている印象が強く、最後の決戦ではあっけなく退場していく展開が待っています。
仲間との絆や成長の積み重ねによる熱さや感動を期待していた身としては、その描き方にもう一歩踏み込んでほしかった気もしました。また、主人公が抱えるトラウマとそれを乗り越える過程にも、もう少し丁寧な掘り下げがあれば、ラストに向けた盛り上がりも変わっていたかもしれません。
また、海から怪獣が来るにもかかわらず、なぜ海に近い都市に人々が暮らしているのかという疑問や、巨大ロボットが人型である必然性など、設定面でのツッコミどころもちらほら。登場人物たちの会話に挿まれるギャグのようなやり取りも、テンポを削ぐように感じる場面がありました。
ただ、視覚的な迫力やスケールの大きさは十分にあり、怪獣とロボットがぶつかり合う醍醐味を味わえる作品であることは間違いありません。ダイナミックなアクションとともに、人類の生き残りをかけたドラマが繰り広げられる一作でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2013/08/13 イオンシネマ多摩センター 2017/04/10 NETFLIX 2023/02/23 NETFLIX
監督 | ギレルモ・デル・トロ |
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脚本 | トラヴィス・ビーチャム |
ギレルモ・デル・トロ |
出演 | チャーリー・ハナム |
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イドリス・エルバ | |
菊地凛子 | |
チャーリー・デイ | |
ロバート・カジンスキー | |
マックス・マーティーニ | |
ロン・パールマン | |
芦田愛菜 |