映画【ONODA 一万夜を越えて】感想(ネタバレ):サバイバルと信念を描く3時間の旅

Onoda
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●こんなお話

 フィリピンでの残留日本兵の話。

●感想

 陸軍中野学校で「絶対に玉砕は許されない」と教えられた小野田寛郎の信念。その言葉を心に刻み、生き残るためにサバイバルを続ける執念の強さが、特に青年期を演じた津田寛治の表情ひとつでビシッと伝わってきたのが印象的でした。仲間が地元住民に殺されるショッキングな場面も強烈で、目をそらせない迫力がありました。

 フランス映画らしく、極限状態にある男同士の裸の付き合いの中に性愛がほんのり描かれていたり、地元民を軽んじて命を奪うといった行動も、少しだけれど描かれていて、過剰な美化を避けたフェアな視点を感じました。小野田さんは、最後まで命令に忠実だった日本兵として称賛される一方で、現地住民を理由もなく殺して報復を恐れて出てこなかったとも言われる。そのどちらにも極端に偏らず、淡々と描いていたのも良かったと思います。

 ただし、上映時間3時間という長さは正直きつく感じました。特に前半はテンポが遅く、主人公が陸軍中野学校に入隊して、イッセー尾形演じる教官に「蚊が天井にいるんです」とか「歌を自分と同じように歌え。まったく同じに歌うわけじゃない」など抽象的なやりとりをしただけで、「訓練は終わった!」となってしまう。これでは中野学校の教育の中身がよくわからなかったです。

 各シーンの尺も長く、歌を歌うだけでも冗長に感じてしまったり、雨音や虫の音が延々と流れ続けるだけの場面など、眠気との戦いを強いられることもありました。出演者の風貌もどうしても現代の若者に見えてしまって、なかなか日本兵としては入り込めなかったのももったいないと思いました。セリフも聞き取りづらい場面が多く、何を話しているのかわからない部分もちらほら。

 物語が本格的に動き始めるのは、若者が小野田さんに会いに来て説得を始める終盤から。それまではひたすらジャングルの中で戦友と語り合うだけ。とはいえ、そこからのイッセー尾形さんの芝居はさすがの貫禄で、戦時中の硬さから一転、どこか抜けたユーモアを漂わせる後年の小野田を見事に演じきっていたと思います。

 個人的に、小野田寛郎という題材が日本映画ではなくフランス映画として作られたという点に少し寂しさを感じてしまう部分もあり。けど、だからこそ描けた距離感や冷静さもあったのかもしれないです。

☆☆☆

鑑賞日:2021/10/29 TOHOシネマズ日比谷

監督アルチュール・アラリ 
脚本アルチュール・アラリ 
ヴァンサン・ポワミロ 
原案ベルナール・センドロン 
出演遠藤雄弥 
津田寛治 
仲野太賀 
松浦祐也 
千葉哲也 
カトウシンスケ 
井之脇海 
足立智充 
吉岡睦雄 
伊島空 
森岡龍 
諏訪敦彦 
嶋田久作 
イッセー尾形 
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