●こんなお話
火事のあったマンションで住民たちに幽霊が襲うので除霊する話。
●感想
いわく付きのマンションから一人の女性が飛び降り自殺する場面から始まる。この建物は1984年に大規模火災が発生し、多くの犠牲者を出したことで「凶宅」と呼ばれ、封鎖された4階では今も怪奇現象が絶えない場所として恐れられていた。
このマンションで暮らしているのが、霊感を持つ女性ペイジーである。彼女は幼い頃に母を亡くしており、その母親こそ、火災の原因となったと世間から非難され続けた女性だった。祖母に育てられたペイジーは、母が本当に罪を犯したのか確かめたいという思いから修行を積んで霊媒師となり、マンションに留まる犠牲者たちの霊を弔いながら、母親の魂と再会する日を待ち続けていた。
一方、マンションでは住み込み警備員として働きながらホラー小説を書いている青年シャオジュンが、新作の題材を探していた。彼は不思議な雰囲気を漂わせるペイジーを見かけ、彼女の体験を小説にしたいと取材を申し込む。最初は原稿料の一部を謝礼として支払うことを条件に応じたペイジーだったが、二人は次第に封鎖された4階や火災事故の真相を調べるようになる。
ペイジーはシャオジュンを火災現場となった4階へ案内し、この場所がかつて売春宿として使われ、母親もそこで働いていたこと、そして火災によって多くの人が命を落としたことを語る。世間では母親が焼身自殺を図ったことが火災の原因だと信じられていたが、ペイジー自身はその話に疑問を抱いていた。
その後もマンションでは怪異が相次ぐ。幼い少女には少年の霊が取り憑き、ペイジーは除霊を行う。少年は火災で亡くなった子どもで、地下駐車場でホームレス生活を送る母親が今も息子の帰りを待ち続けていた。ペイジーは二人を再会させ、「もう待たなくてもいい」と少年が母へ語りかけることで、少年はようやく未練を断ち切り成仏していく。ペイジーはこのように、マンションに残る霊たちを少しずつ救い続けていた。
一方のシャオジュンには奇妙な現象が起こり始める。執筆中のノートパソコンには、自分が入力した覚えのない文章が勝手に現れ、それが直後に現実となっていくのである。さらに赤い服を着た女性の霊の姿を目撃し、マンションにはまだ救われていない存在が残っていることを知る。
その頃、ペイジーは悪意ある霊に狙われていることを感じ取り、修行した寺の師匠を訪ねる。師匠は彼女へ護符代わりの数珠を授け、今は焦らず時を待つよう助言する。しかし怪異はさらに激しくなり、借金に苦しむ女性イーティンが不可解な出来事へ巻き込まれる。彼女は謎の霊によって命を救われた後、催眠によって火災当日の記憶の断片を目にする。その記憶には、封鎖された4階に置かれた箱の存在が映っていた。
調査を進める二人は、火災当時の新聞記事から衝撃の事実を知る。犠牲者は20人とされていたが、火災が起きる前に4階の冷蔵庫から女性の遺体が発見されていたにもかかわらず、その事件は火災の混乱に紛れて隠蔽されていたのである。つまり火災以前に殺人事件が起きていた可能性が浮かび上がる。
やがてシャオジュンの身体へ霊が憑依する。当初は偽物の霊だったためペイジーが除霊するが、その後現れたのは本当に母親の魂だった。母は生前の出来事を少しずつ語り始める。
当時、母と親友のリーメイは売春宿で働かされていた。借金を抱えるリーメイは逃げることもできず、ある日、母が譲った客から激しい暴力を受ける。抵抗したことで雇い主バオの怒りを買い、リーメイは瀕死になるまで暴行されてしまう。助けを求める彼女を周囲の女性たちは恐怖から見捨て、母もまた何もできなかった。バオは死亡したリーメイの遺体を冷蔵庫へ隠し、事件を隠そうとする。
絶望した母は酒を飲み続け、朦朧とした意識の中でロウソクを倒してしまう。その火は一瞬で建物全体へ燃え広がり、逃げ遅れた住人や売春宿の女性たち、そしてバオまでも炎の中へ飲み込んでいく。世間では母が放火したとされていたが、実際は罪悪感と絶望の中で起きた事故であり、その裏にはリーメイを見捨ててしまった後悔があった。
真実を知ったリーメイの怨霊は復讐心を手放そうとするが、長年積み重ねた憎しみは簡単には消えない。すると母は彼女を優しく抱きしめ、「これからも一緒にいる」と語りかける。二人の魂は青白い炎に包まれながら静かに消えていき、ペイジーは気を失ったままその別れを見届ける。目を覚ますと、幼い頃から完成しなかった天使のジグソーパズルの最後の一片が、彼女の手の中に握られていた。母が最後に娘へ残した別れの贈り物だった。
事件後、シャオジュンはノートパソコンへ残されていた不思議な文章をもとに小説を完成させる。その作品は大きな話題となり、取材に訪れた配信者へ彼は「この小説は幽霊と一緒に書いた作品なんだ」と冗談めかして語る。そして再び封鎖された4階へ案内する場面でおしまい。
実在するマンションで起きた火災事故をベースという説明から驚き、終盤で建物全体が炎に包まれる場面には独特の迫力がありました。恐怖というよりも、長年積み重なってきた人々の悲しみや無念まで炎が包み込んでいるような神々しさが感じられ、印象に残るシーンになっています。
ホラー演出では、子どもの霊や主人公の母親の後輩の幽霊が突然姿を現す場面が多く、ジャンプスケアもしっかり用意されています。静かな場面から一気に恐怖へ転じる演出が続くため、思わず身構えてしまう瞬間が何度もありました。
一方で、主人公のペイジーが物語を引っ張るというより、母親やその後輩たちの過去を描く回想が中心になっている印象でした。重要な出来事のほとんどが過去のエピソードで展開されるため、現在の時間軸にいるペイジーは真相を見届ける立場に回ることが多く、やや傍観者のように感じられました。
シャオジュンについても、ホラー作家志望という設定や調査役としての立場は面白いものの、終盤では母親の霊に憑依される展開がある程度で、物語全体への関わりは思ったほど大きくありません。ペイジーとのバディ要素や、二人で事件を解決していく流れがもう少し描かれていれば、ドラマとしてさらに厚みが増したように思います。
実話をモチーフにした背景と、火災事故の真相を少しずつ明かしていくミステリー要素は魅力的でした。派手なホラーだけでなく、実際の事件から生まれた悲劇や、人々の無念を描こうとした作品としても印象に残る一本でした。
☆☆
鑑賞日:2026/07/04 U-NEXT
| 監督 | シエ・ジーウェン |
|---|---|
| 脚本 | シエ・ジーウェン |
| ルービエンタン |
| 出演 | チェン・ユー |
|---|---|
| パン・ジュンルン | |
| ホアン・ジンイー | |
| ダイ・ピンヤ | |
| ガオ・フイジュン | |
| ジェン・インション | |
| ポン・チャチャ |


