●こんなお話
2つの部隊から対ソ連戦のために雪山での訓練をするために、高倉健さんのほうの部隊は少数精鋭で雪国生まれの人たちをつけて村人の案内もつける部隊と高倉健さんと同じく少数精鋭で村人の案内もつけたい北大路欣也さんの部隊でしたが、使えない上官のせいで悪いほう悪いほうにいってしまう話。
●感想
明治時代の日本軍。対ロシア戦を見据えた耐寒訓練をめぐって、軍の上層部は「寒さなんて問題ない」といったような楽観的な判断をしていて、現場の軍人である高倉健や北大路欣也もその方針に従わされる。上官の思いつきで、八甲田山を2つの部隊がそれぞれ違うルートから出発し、途中ですれ違えばいいという無茶な作戦が立案されるが、これにも彼らは従うしかない。
高倉健の部隊は少数精鋭で、村人の案内を受けながら綿密な計画のもとに雪中行軍を開始する。一方、北大路欣也の部隊は大人数で最初は晴天にも恵まれ、遠足気分。大隊長が「これは行けるだろう」と軽く判断してしまい、気軽な気持ちで進軍を決定してしまう。
だが天候は急変。雪が激しくなり、ソリは遅れ、食料は凍り、次第に部隊の状況は悪化していく。それでも温泉宿に泊まるなど、まだどこか余裕があったが、大隊長の命令でどんどん状況は泥沼に。北大路欣也の冷静な判断よりも上司の命令が優先され、隊は崩れていく。
道を知っているという案内人に頼るも、その案内も間違っていたり、休むべきときに進み、進むべきときに休むなど、判断ミスが続出。ついには崖で滑落する者も続出する。あまりの状況に、北大路欣也が「天は我々を見放した」とつぶやくと、それがきっかけになって心が折れ、倒れていく隊員たちも出てくる。そんな中でも加山雄三演じる軍人が希望を捨てず、隊を鼓舞しようとする姿が胸を打つ。
一方、高倉健の部隊は予定より遅れはしたが、雪中行軍を見事成功させる。そして、途中で再会を約束していた北大路欣也の部隊が大量に遭難し、遺体となって発見されることに。高倉健が彼の死を悼み、上官に報告し、北大路欣也の妻と面会するシーンは静かだけど深い余韻がある。
生還したわずかな兵士たちも、その後すぐに日露戦争の激戦地へと送られ、全員戦死という重たいラストで物語はおしまい。
この映画は、一言でいうと「使えない上司がいると人生が終わる」という、現代のサラリーマンにも通じるような教訓を強く感じさせてくれる作品です。準備を入念に行い成功させた高倉健の部隊と、知識も準備も足りないまま突っ込んで壊滅していった北大路欣也の部隊。その対比があまりにも残酷で、無力さや理不尽さがリアルに伝わってきます。
雪山での過酷な描写は圧巻ですが、2時間40分という長さはちょっと長く感じる部分もあったり。四季折々の回想シーンが挟まれてはいるものの、特に遭難が発覚してからは展開がややスローで、少し間延びした印象もありました。
とはいえ、過酷な自然と軍の理不尽な命令、友情、そして無力さ。様々な感情が交差して、非常に見応えのある作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2012/12/20 DVD 2024/02/11 BS12 トゥエルビ
監督 | 森谷司郎 |
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脚本 | 橋本忍 |
原作 | 新田次郎 |
出演 | 島田正吾 |
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大滝秀治 | |
高倉健 | |
丹波哲郎 | |
藤岡琢也 | |
浜田晃 | |
加藤健一 | |
江幡連 | |
樋浦勉 | |
北大路欣也 | |
三國連太郎 | |
加山雄三 | |
小林桂樹 | |
神山繁 | |
森田健作 | |
東野英心 | |
荒木貞一 | |
下絛アトム | |
江角英明 | |
井上博一 | |
佐久間宏則 | |
伊藤敏孝 | |
緒形拳 | |
栗原小巻 | |
加賀まりこ |