●こんなお話
ヤンキースの一塁手がニッポンの中日ドラゴンズに移籍して、最初はワガママだったけどしだいにチームプレーを学んでいく話。
●感想
アメリカではすでに過去の選手とされ、第一線を退いたベテランの主人公は、ある日突然中日ドラゴンズへの移籍を言い渡される。新天地は日本。異国のプロ野球チームで新たな野球人生を歩むこととなった彼は、戸惑いと好奇心を抱きながら日本に降り立つ。
入団会見では記者からの質問に冗談交じりで返すも、通訳の言葉はやや婉曲的に変換されてしまい、自分の言葉がどれほど伝わっているのか不安を覚える。日本での住まいはアメリカと比べれば狭いが、それでも「広い部屋だ」と紹介されるギャップに驚きつつ、慣れない生活が始まっていく。
ロッカールームでは外国人というだけで一線を引かれたような視線を浴びながらも、チームメイトとの距離を少しずつ縮めていく。監督への挨拶の場でも、文化の違いからどこか噛み合わないやりとりが続くが、彼は自身のやり方を信じてプレーを続ける。
練習では全員が同じメニューを行い、効率よりも調和を重視する姿勢に、主人公は疑問を持つ。試合ではバントのサインに不満を見せながらも従い、もどかしさを感じる日々が続く。そんな中、CM出演の話が舞い込む。担当者の女性と交流を深め、次第に恋仲へと発展していく。彼女の実家を訪ねると、まさかの監督が父親だったという事実に驚かされる。さらに、食事の場面では音を立ててそばをすする文化にも驚きながら、日本での日常を一つひとつ理解していく。
やがて主人公は、日本式の練習方法を受け入れようと、監督とのマンツーマン練習に取り組み始める。監督自身も球団からの成績に対するプレッシャーにさらされ、背水の陣でチームを率いていた。ふたりの立場は違えど、それぞれに懸ける思いが交差し、少しずつ信頼関係が築かれていく。
チームも好調を維持し、主人公にはホームラン記録達成への期待が集まる。だが、対戦相手からの敬遠やデッドボールなどの妨害もあり、思うように結果を残せない。そんな中、チームメイトが彼をかばって乱闘に発展する場面もあり、彼は仲間意識の芽生えを感じる。
最終戦、記録まであと一本という場面で打席に立った主人公に、ベンチから送られたのはホームランを打てのサインだった。記録を追い求めるか、チームの勝利を優先するか。彼は迷いなくバットを振り抜き、スクイズを成功させて優勝を決める。
エピローグでは、アメリカに帰国した主人公が若手選手に指導を行い、その傍らには恋人が微笑みながら見守っている。かつて異国で経験した出来事が、彼の中にしっかりと根を張っていた。
まず物語全体を通して、王道とも言える「異文化の衝突と和解」を主軸にしながら、野球というスポーツを通じて心が通じ合っていく過程が熱く描かれていたと感じました。頑固な監督と奔放な主人公という、まさに典型的な構図ではありますが、演出が過剰にならずに丁寧に描かれていたので、無理なく感情移入することができました。
また、80年代のバブル期の雰囲気を色濃く反映している舞台背景が作品に独特の空気を与えていて、外国から見た日本という視点がとても興味深かったです。日本の野球文化の中に飛び込んでいく主人公が戸惑いながらも順応していく姿は、異国の地で仕事をする人々すべてに通じるものがあるようにも感じられました。
特に印象的だったのは、練習方法や試合中のサインなど、日本式の細やかな組織運営と、アメリカ流の個人の能力を重視する考え方が正面からぶつかる場面です。それぞれの立場に言い分があり、どちらが正しいということではなく、互いに歩み寄ることの大切さを静かに伝えてくれていたように思います。
カルチャーギャップという意味では、電車内での葉巻や食事のマナーなど、現代の視点から見れば驚かされる場面も多く、その時代ならではの空気が映像からも伝わってきました。日本という土地を舞台にしながらも、あくまでハリウッド映画のテンポと構成で展開されているので、軽快さと骨太なテーマ性のバランスが心地よい一作だったと感じる1作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2014/11/01 DVD 2023/02/12 Amazonプライム・ビデオ
監督 | フレッド・スケピシ |
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脚本 | ゲイリー・ロス |
ケヴィン・ウェイド | |
モンテ・メリック |
出演 | トム・セレック |
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高倉健 | |
高梨亜矢 | |
デニス・ヘイスバート | |
塩屋俊 | |
保積隆信 | |
マック高野 | |
藤原稔三 | |
藤田朋子 | |
レオン・リー |