映画【ミミックⅡ】感想(ネタバレ):暗闇に潜む知識と恐怖|昆虫が導く知と人間ドラマの交錯

Mimic II
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●こんなお話

 前作で絶滅したはずの昆虫が生きていて主人公に付きまとってくる話。

●感想

 雨が静かに降る夜。アジア系の若い男性が、大事そうに鞄を抱えて街を急いでいた。逃げるような足取りに、ただならぬ気配を感じさせる。その途中、彼の前に突然巨大な昆虫が現れ、動揺した彼は足をもつれさせるように車道へ。そこへやってきたタクシーにはねられて命を落とす。ひとつの不可解な死から、物語は始まっていく。

 この事件を担当するのは、冷静沈着な雰囲気をまとう刑事。現場には不可解な点が多く、事故とも事件とも言えない状況に警察内でもざわつきが広がっていく。一方で物語の主人公は、高校で教鞭をとる生物教師。昆虫に対する専門的な知識を持ち、研究活動も熱心に行っている。放課後には授業や研究だけでなく、生徒たちと積極的に交流し、彼らの悩みに耳を傾ける存在でもある。

 そんなある日、彼の恋人が何者かに襲われて命を落とす。恋人がひとりでいる時に限って昆虫のような何かに襲われる。主人公の身の回りで次々と不可解な死が起きていく中で、刑事が主人公の元を訪れるようになり、彼自身が疑われていることに気づく。どこかでつながっているような事件の連鎖。その真相に徐々に近づいていく。

 やがて、主人公の研究室に、あの冒頭で命を落としたアジア人男性が持っていた鞄が届けられる。無造作に置かれたその鞄を生徒が好奇心から開けようとすると、中からあふれるように現れたのは大量の昆虫の幼虫。その異様な光景に、生徒たちは混乱と恐怖に包まれていく。研究室はたちまち異変に飲み込まれ、学校全体が何かに侵食されていくような錯覚に陥る。

 登場するのは、家庭に居場所がない子どもや、過去に心の傷を抱えた卒業生たち。彼らとともに、昆虫の巣と化した学校から脱出するというクライマックスへと進んでいく。刑事が再び現れ、逃げ場を失った彼らを導く。閉ざされた空間の中で、生と死の狭間を懸命に生き抜く姿が描かれる。

 すべてが終わったように見えた脱出劇のあと、衝撃の展開が待ち受けている。主人公の身体には、知らぬ間に卵が植えつけられていた。そして共に戦ったはずの刑事の中身は、すでに昆虫によって模倣されていたのだ。人の姿をしたまま、静かに何かが潜んでいるという終わり方には、ゾッとするような余韻が残りました。

 全体的に暗いトーンの画面が作品の雰囲気を作り出していて、世界観としての統一感は強く感じられました。ただ、個人的には光の反射が強く、やや見づらいと感じる場面もありました。また、子どもたちと共にサバイバルを繰り広げる展開がやや型通りに見えてしまった印象です。主人公が前作でも登場していた人物だそうで、昆虫に詳しいという設定でありながら、擬態した昆虫に気付かないという描写には少し引っかかりを覚えました。

 さらに印象的だったのは、恋人との時間を自撮りするという描写。そこに見られる執着とも呼べる行動に、ささやかな不気味さを感じたのも事実です。そして何より気になったのは、なぜ冒頭のアジア人男性が“ユダの血統”の幼虫を持っていたのか。その背景や理由についても、もう少し物語の中で触れてほしいと感じました。

 とはいえ、「知識を持つ者の孤独」「人間の皮をかぶる異物」といったテーマには、独特の魅力がありました。昆虫という題材を用いながら、人と人との関係、そして人間の中に潜む不確かさを描いた作品だったと思います。

☆☆

鑑賞日:2022/09/03 U-NEXT

監督ジーン・デ・セゴンザック 
脚本ジョエル・ソアソン 
出演アリックス・コロムゼイ 
ブルーノ・カンポス 
ジョン・ポリト 
エドワード・アルバート 
ガヴェン・ユージーン・ルーカス 
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