●こんなお話
スケボーの仲間たちとか兄とか母親とかの生活する少年の話。
●感想
兄が部屋で暴力を受けている場面から物語は始まる。その光景を静かに見つめる少年が主人公となり、舞台は郊外の町へと移っていく。主人公は気の向くままに街をさまよい、やがてスケートボードに夢中になっている不良の少年たちに出会う。彼らは大人の目から見ればいわゆる“素行の悪い若者たち”であるが、主人公の目にはどこか自由で、輝いて見える存在だった。
主人公は、スケートボードの練習をはじめる。転びながらも自分なりに上達していき、少しずつその少年たちに近づいていく。気づけば彼らの輪の中に入り、言葉を交わし、笑い合うようになっていた。
ある日、彼らとともに高い場所からジャンプするという無謀なチャレンジに挑んだ主人公は、失敗して怪我をしてしまう。しかし、その勇気が評価され、仲間としてより強く受け入れられていく様子が描かれる。ただその一方で、そうした流れを面白く思っていない友人がいたり、パーティーでは初めての恋愛体験のようなものもあり、少年の内面は揺れ動いていく。
母親が彼らと関わっていることを知った主人公は強く反発し、母と口論になる。親子関係もギクシャクしながら変化していくなか、仲間のひとりがぽつりと「自分の人生が最低だと思っていたけど、みんな何かしらの苦しみを抱えているんだよ」と語る。その言葉が静かに、しかししっかりと心に残っていく。
やがて、仲間のひとりが酒やドラッグにのめり込んでいき、ついには暴走した末に事故を起こしてしまう。作品はその事件を経て、入院した主人公のもとへ仲間たちが訪れるという静かな時間へと移る。母親は息子と仲間たちを引き合わせ、少年たちは自分たちが撮りためていた映像を見せる。フィルムのなかで笑っている過去の自分たちを見ながら、それぞれの想いが胸に去来する。
この作品は、ひと夏のような時間を通して描かれる、友情と成長の記録でもあります。スケートボードというカルチャーに詳しくなくても、ひたむきな若者たちの姿にはどこか心が動かされる部分がありました。荒っぽく見える会話や行動の中にも、彼らなりの不器用な優しさが込められていることが少しずつ伝わってきます。
人種や家庭環境といったアメリカならではの社会的背景も、さりげなく描かれており、その断片を通して若者たちの居場所のなさや、人生への諦めにも似た感情が見えてくるように思いました。特に、誰にも頼れず、それでも何かにしがみつこうとする少年たちのまなざしには、胸を打たれるものがございます。
スケートボードでの高所ジャンプや、無茶な運転など、危険な行動がリアルに描かれる場面も多く、それが現実の重みを引き立てていたように感じます。もちろん、こうした危険な行為は実生活で決して真似してはいけないと強く感じました。映画を通じて、命の尊さや、日々の関係の大切さをあらためて考えるきっかけになったように思います。
☆☆☆
鑑賞日:2023/01/20 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ジョナ・ヒル |
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脚本 | ジョナ・ヒル |
出演 | サニー・スリッチ |
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キャサリン・ウォーターストン | |
ルーカス・ヘッジズ | |
ナケル・スミス | |
オーラン・プレナット | |
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