映画【牝猫たち】感想(ネタバレ):池袋の夜を舞台に描かれる女性たちの群像劇

Dawn of the Felines
スポンサーリンク

●こんなお話

 デリヘルで働く女性3人と彼女たちのお客さんとの話。 

●感想

 池袋の夜の雑踏や朝方の街並みを切り取った映像は独特の光を放っていて、荒々しさの中に都会ならではの孤独や虚無感が漂っていて、煌々としたネオンの下で交錯する人々の姿や、早朝の静まり返った道に残る疲労の気配は、映画全体のトーンを決定づける大きな要素になっていました。 

 そこに登場するのは、さまざまな事情を抱えながら都会の片隅で生きる女性たち。住む場所を失い、客の部屋や漫画喫茶を転々としながら日々をしのぐ若い女性。子どもを育てながらも、怪しげなベビーシッターに我が子を預けざるを得ないシングルマザー。夫はいるが子どもを授かれず、その隙間を縫うように不倫に走ってしまう女性。それぞれの人物像が淡々と描かれることで、都市に潜む影が少しずつ浮かび上がっていきます。

 序盤の描写はどれも興味深く、三者三様の生きざまを追う時間には引き込まれるものがありました。ただ、80分ほどの上映時間にこれだけの人物像を盛り込むには分量が足りず、どのエピソードも十分に掘り下げられる前に場面が移り変わっていく印象が残りました。どの方向に物語を進めるのか、もう少し集中して描いてほしかったと感じた部分もあったり。

 ラストに向かうにつれ、展開の唐突さも目立つ印象で。暴力を受けていた子どもがいつの間にか街を歩き、怪獣の幻影を目にする場面で終わってしまうくだりや、高齢の客とのやりとりが曖昧なまま終息してしまう構成には、物語の余韻というより置き去りにされた印象がありました。屋上での濡れ場を演じるホームレスの少女の姿も、作品世界の必然性よりも撮影の大変さが頭をよぎってしまい、映画の中に没入できなかったです。

 ただ、さすがロマンポルノらしく生々しさをまとった演出や映像の濃度は確かに存在し、現代の都市に生きる人々の孤独を描こうとした意志は感じ取れました。惜しい部分はありながらも、断片的に残る場面の強度には引きつけられるところがありました。

☆☆☆

鑑賞日: 2017/11/25 DVD

監督白石和彌
出演井端珠里 
真上さつき 
美知枝 
音尾琢真 
郭智博 
村田秀亮

コメント

タイトルとURLをコピーしました