映画【殺人の追憶】感想(ネタバレ):韓国未解決事件を描いた衝撃作!

memories-of-murder
スポンサーリンク

●こんなお話

 86年のソウル近郊の農村で若い女性ばかりが狙われる連続殺人が起こって、刑事たちが走り回る話。

●感想

 1986年の韓国・農村部の田園風景から静かに始まる。一人の少年が田んぼでバッタを捕まえている中、遠くから耕運機に乗ってやってくるのは地元の刑事。その刑事が用水路を覗き込むと、そこには裸の女性の遺体が横たわっている。

 地元の警察が事件解決にあたるものの、その捜査手法はあまりにもずさんで、暴力的な尋問や証拠の捏造、容疑者への拷問による自白の強要など、現代では到底考えられないような方法が横行していたことが生々しく描かれます。

 物語は、地元警察が妻との雑談から導き出した一人の男性を拷問に近い形で取り調べし、自白を引き出すところから本格的に動き出す。しかし、ソウルから派遣された若きエリート刑事が登場し、その容疑者は犯人ではないと確信。結果としてその容疑者の無実が明らかになり、警察の捜査の甘さが記者たちからも非難されることになります。

 やがて、雨の日に特定の曲がラジオから流れるたびに事件が起きているという共通点が浮かび上がり、雨の日に囮捜査を行ったり、生存者から証言を得たりと捜査は進展を見せます。現場で不審な行動をしていた男性を追いかけ逮捕するも、結局ただ性癖に問題があるだけの人物だったと判明し、釈放されたり。

 その後、ラジオ番組にリクエストを送っていた男性に目をつけたソウルの刑事は、この人物が真犯人ではないかと疑い、徹底的な尋問を行います。しかし、決定的な証拠が見つからず、現場に残されたDNAの鑑定結果をアメリカに依頼することになります。結果が出るまで釈放を余儀なくされ、刑事は男を尾行しますが、隙を突かれて姿を消されてしまい、再び事件が発生。

 激昂した主人公は再び容疑者を追い詰め、自白を迫りますが、鑑定結果が届き、DNAが一致しないことが判明。容疑者は釈放され、真実は掴めないまま月日が流れます。物語は、元刑事となった主人公が再び事件現場を訪れ、地元の子どもから「以前、ここで犯人らしき人を見た」と聞かされる場面で静かにおしまい。

 本作は、当時の韓国社会における警察制度の未熟さや、冤罪の危険性を浮き彫りにしつつ、同時にノスタルジックな映像美でも魅了します。雨の描写や黄金色の田園風景、トンネル、汽車といった美術的な映像は、岩代太郎さんによる音楽と絶妙に調和し、作品全体に叙情的な雰囲気を与えています。

 130分という長尺ながら、息をつかせぬ展開と緻密な演出によって最後まで惹きつけられる、非常に完成度の高い社会派サスペンス映画でした。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2014/06/29 Blu-ray 2024/08/10 U-NEXT

監督ポン・ジュノ 
脚本ポン・ジュノ 
シム・ソンボ 
出演ソン・ガンホ 
キム・サンギョン 
パク・ヘイル 
キム・レハ 
ソン・ジェホ 
ピョン・ヒボン 
パク・ノシク 
チョン・ミソン 
コ・ソヒ 
タイトルとURLをコピーしました