●こんなお話
謝罪のプロが起こすドタバタの話。
●感想
東京で「謝罪師」という前代未聞の職業を名乗り、あらゆるトラブルを謝罪のみで解決してきた男・黒島譲は、東京謝罪センターの所長として活動している。日常的に舞い込むのは、友人同士の揉め事や軽微な事故、企業間トラブルなどさまざまだが、黒島は相手の感情と状況を瞬時に読み取り、的確な言葉と所作で事態を収めていく存在だった。
ある日、海外生活が長く、日本的な謝罪文化に馴染めない女性・倉持典子が、ヤクザの車に追突してしまった事故の謝罪を依頼しに現れる。黒島は事前準備から当日の振る舞いまで徹底した段取りで謝罪を成功させ、その鮮やかな手腕に感銘を受けた典子は、東京謝罪センターで黒島のアシスタントとして働くようになる。
次に持ち込まれるのは、下着メーカーに勤める沼田卓也が、飲み会での不用意な発言をきっかけにセクハラ問題を起こし、訴訟寸前まで発展した案件だった。黒島は沼田に謝罪の基本から心構えまでを叩き込み、相手の立場や感情を理解した謝罪を実行させることで事態を収束させる。また芸能人親子の謝罪会見をプロデュースする。ここで描かれるのは、謝罪とは単なる言葉の問題ではなく、関係性や背景を含めた総合的なコミュニケーションであるという考え方だった。
そんな中、映画プロデューサーの和田耕作が関わる撮影現場で、偶然来日していたマンタン王国の皇太子を無断で撮影してしまったことが大問題となる。肖像権侵害は国際問題へと発展し、日本政府も公式な謝罪を求められる事態にまで膨れ上がる。黒島は和田の代理としてマンタン王国へ向かうが、現地の文化や価値観を十分に理解しないまま行った謝罪は逆効果となり、状況はさらに悪化していく。
この問題をきっかけに、過去に黒島が関わった謝罪案件や人物たちが複雑に絡み合い始める。大物俳優・南部哲郎の息子が起こした事件、国際弁護士・箕輪正臣との因縁などが次々と浮上し、謝罪という行為そのものの意味が問われていく。
追い詰められた黒島は、形式やパフォーマンスとしての謝罪ではなく、本当に相手と向き合う謝罪とは何かを模索し、国の威信を背負った前代未聞の「究極の謝罪」に挑む。数々の失敗と誤解を経て、謝罪とは上下関係を示すものではなく、互いを理解し合うための入り口であるという考えに辿り着き、物語はその到達点を示しておしまい。
謝罪のアドバイスを専門に行う会社の社長が、さまざまな人々の謝罪をプロデュースしていくという着想自体が非常に新鮮で、題材の勝利だと感じました。テンポが良く、テンションの高い登場人物たちが次々とボケややり取りを重ねていく構成は、見ていて純粋に楽しい部分が多かったです。
短編集のように複数のトラブルが提示され、それぞれが手際よく紹介され解決していく流れは、実際の芸能ニュースや政治スキャンダルを思わせる小ネタも多く、そうした部分では思わず笑ってしまいました。製作陣の観察眼と皮肉の効かせ方はさすがだと感じます。
一方で、一本の映画として考えると、観客を強く引っ張っていく求心力はやや弱く、次第に同じような展開が続いている印象も受けました。特に映画製作者がマンタン王国の人々を怒らせてしまうあたりから、やっていることが繰り返しに見えてしまい、やや単調に感じられました。
主人公を含め登場人物たちが大きな悩みや葛藤を抱えているわけではなく、物語がスムーズに転がりすぎる点も、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。笑いの中で何かを学び、変化していくような要素がもう少しあれば、映画としての厚みが増したようにも思えました。
ラストで提示される、日本語とマンタン王国の言語の違いを利用した謝罪のアイデアも、狙いは理解できるものの、個人的には強く刺さる面白さには至らなかったです。
とはいえ、勢いとテンポで押し切り、とにかく笑わせるというコンセプト自体はしっかりと成立しており、この分野を得意とする製作陣の力量を再確認できる一本でした。全体として、気軽に楽しむコメディ映画としては十分に役割を果たしている作品だと思います。
☆☆
鑑賞日: 2013/09/28 試写会 2026/01/27 U-NEXT
| 監督 | 水田伸生 |
|---|---|
| 脚本 | 宮藤官九郎 |
| 出演 | 阿部サダヲ |
|---|---|
| 井上真央 | |
| 岡田将生 | |
| 尾野真千子 | |
| 高橋克実 | |
| 松雪泰子 | |
| 竹野内豊 | |
| 荒川良々 | |
| 岩松了 | |
| 濱田岳 | |
| 小野武彦 |


