●こんなお話
ギャンブル狂で借金まみれの老人が若い時の助監督時代を思い出したり、孫に脚本の才能を再発掘してもらって頑張っていこうとする話。
●感想
現代。郷一はギャンブルと酒に溺れ、借金を重ねながら暮らしている元映画人である。妻の淑子は長年その生活に振り回され、娘の歩は父に反発して距離を置いている。歩のもとには借金の督促電話がかかり、家族は改めて郷一の問題と向き合うことになる。歩は母とともに依存症のセミナーに足を運び、郷一を立ち直らせようとするが、最終的に家を出るよう告げる。
郷一は親友・寺林新太郎が支配人を務める名画座に身を寄せる。そこで上映されていた昔の日本映画を目にし、自分が助監督として撮影所に通っていた昭和30年代を思い出す。
昭和30年代、松竹撮影所。若き日の郷一は助監督として現場を走り回りながら、脚本家として認められることを目標にしている。撮影所で働く映写技師の寺林と出会い、二人は映画について語り合う仲になる。寺林は映画館を持つ夢を抱き、郷一の脚本を信じて励ます存在となる。
撮影所の食堂で働く淑子とも出会う。寺林は淑子に想いを寄せるが、淑子は郷一に惹かれていく。郷一は友情を優先しようと距離を取るが、その態度に寺林は怒りを見せる。三人の関係は揺れ動くが、やがて郷一と淑子は結ばれる。
郷一はついに監督デビューの企画が立ち上がる。しかし撮影現場での衝突や重圧の中で事故に遭い、企画は中止となる。郷一は挫折し、次第に酒と賭け事にのめり込んでいく。淑子はそれでも支え続け、二人は結婚し家庭を築くが、郷一は映画界で大成できないまま年月が過ぎる。
現代。孫の勇太は郷一の古い脚本を見つける。それは若いころに書いた脚本で。勇太は内容に興味を持ち、祖父に続きを書くよう求める。郷一は最初は拒むが、勇太とともに原稿を読み返し、リライト作業を始める。
二人は完成させた脚本を城戸賞に応募する。結果は入選。郷一は入院中のため授賞式に出席できず、歩が代理で登壇し、郷一から託された家族への感謝の手紙を代読する。歩は父の思いを受け止める。
その後、郷一は名画座で自分が助監督として関わった作品の上映を観る。スクリーンの中の女優に語りかけられるような感覚を抱きながら、かつての撮影所の日々を思い返す。映画とともに歩んだ人生を胸に刻み、物語はおしまい。
現代パートでは、借金の督促電話から始まる家族の軋轢が強く印象に残ります。ギャンブルと酒に溺れ、子どもや孫にまで金の無心をする郷一の姿はかなり生々しく描かれていました。家族が依存症セミナーに通い、ついには家を出す決断をする流れは現実的で、決して軽く扱われていません。
昭和パートでは、松竹撮影所を舞台に若者たちが夢を語り合う姿が描かれます。助監督として奔走する郷一、映写技師としてフィルムを回す寺林、食堂で働く淑子。それぞれの想いが交錯する三角関係や友情の揺れは、王道の青春ドラマとして楽しめました。
一方で、撮影所の活気や映画産業の熱気という点では、より強い描写を期待したくなる部分もあります。数多くの映画が生み出される現場というより、個人の人間関係に焦点が当たっている印象でした。
現代の郷一はかなり問題の多い人物として描かれており、感情移入が難しい瞬間もあります。だからこそ、孫の勇太が脚本を見出し、城戸賞へ応募を後押しする展開は大胆に映ります。ただ、三世代が同じ脚本を囲む時間には確かな熱がありました。
豪華なキャストが揃い、昭和と現代を往復する構成も含め、日本映画へのオマージュが込められた一本です。映画という存在が人の人生にどう寄り添うのかを考えさせられる作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2022/02/03 DVD 2026/03/12 U-NEXT
| 監督 | 山田洋次 |
|---|---|
| 脚本 | 山田洋次 |
| 朝原雄三 | |
| 原作 | 原田マハ |
| 出演 | 沢田研二 |
|---|---|
| 菅田将暉 | |
| 永野芽郁 | |
| 宮本信子 | |
| 野田洋次郎 | |
| 北川景子 | |
| 寺島しのぶ | |
| 小林稔侍 | |
| リリー・フランキー | |
| 前田旺志郎 | |
| 志尊淳 | |
| 松尾貴史 | |
| 広岡由里子 | |
| 北山雅康 | |
| 原田泰造 | |
| 片桐はいり | |
| 迫田孝也 | |
| 近藤公園 | |
| 豊原江理佳 | |
| 渋谷天笑 | |
| 渋川清彦 | |
| 松野太紀 | |
| 曽我廼家寛太郎 |


