●こんなお話
ヒーローの格好をした自警団がギャングと戦う話。
●感想
ニューヨークのスタテンアイランドで暮らす高校生デイヴ・リゼウスキは、コミックヒーローを愛する平凡な少年だった。勉強も運動も特別優れているわけではなく、学校では親友たちとコミック談義に花を咲かせる日々を送っている。そんなある日、デイヴは「なぜ現実世界にはヒーローになろうとする人間がいないのか」という疑問を抱く。
特殊能力も格闘技の経験もないまま、デイヴは通販で購入したダイビングスーツを改造し、「キック・アス」と名乗って街のパトロールを開始する。しかし現実はコミックのように甘くなく、初めて遭遇した不良たちに返り討ちにされ、ナイフで刺されたうえに自動車にはね飛ばされてしまう。
重傷を負ったデイヴは長期入院するが、全身に金属プレートを埋め込む手術を受けたことで以前より痛みを感じにくい身体になる。普通ならヒーローごっこを諦めてもおかしくない状況だったが、デイヴは懲りずに活動を続行する。
ある夜、複数のチンピラに襲われている男性を助けようとしたデイヴは、必死に戦う。その様子が通行人によって撮影され、動画サイトへ投稿されたことで一躍有名人となる。キック・アスは「現実に存在するヒーロー」として世間から注目を集める存在になった。
学校では長年片思いしているケイティとの距離も縮まっていく。しかしケイティはデイヴを同性愛者だと勘違いしており、恋愛対象ではなく親友として接していた。デイヴは真実を打ち明けられないまま彼女との関係を続ける。
そんな中、ケイティから麻薬ディーラーに付きまとわれているという相談を受けたデイヴは、キック・アスとして麻薬組織のアジトへ向かう。しかし相手は本物の犯罪者であり、デイヴはあっという間に追い詰められてしまう。
その瞬間、紫色のウィッグを被った少女ヒット・ガールが現れる。彼女は拳銃、ナイフ、刀を自在に使いこなし、犯罪者たちを次々と血祭りに上げていく。さらに父親であるビッグ・ダディも現れ、デイヴを救出する。
ビッグ・ダディことデイモン・マクレイディは元警官だった。かつて犯罪王フランク・ダミコによって無実の罪を着せられた結果、人生を破壊されていた。妻を失った彼は娘ミンディを戦士として育て上げ、ヒット・ガールとして復讐計画を進めていた。
一方でダミコは、自身の組織を襲撃している犯人がキック・アスだと思い込む。ダミコの息子クリスは「レッド・ミスト」というヒーローを名乗り、キック・アスへ接近する作戦を提案する。
クリスは自作自演で襲われる芝居を打ち、キック・アスに助けられることで信頼を獲得する。デイヴは彼を本当のヒーロー仲間だと思い込み、親しくなっていく。
しかしクリスは父親のために情報を集めていた。やがてデイヴからビッグ・ダディたちの隠れ家の情報を聞き出し、ダミコ一味を案内する。
隠れ家は襲撃され、ヒット・ガールは窓から撃ち落とされる。ビッグ・ダディとデイヴは捕らえられ、インターネット生中継による公開処刑にかけられる。
二人は激しく暴行された後、ガソリンを浴びせられる。そこへ生き延びていたヒット・ガールが単身で突入し、敵を次々と射殺する。しかしビッグ・ダディは火を放たれ、全身を炎に包まれてしまう。瀕死の状態となったビッグ・ダディは娘へ最後の言葉を残し、そのまま息を引き取る。
父を失ったヒット・ガールは復讐を決意する。デイヴもまた彼女に協力することを決め、二人はダミコの本拠地へ乗り込む。
ヒット・ガールは高層ビル内部で何十人ものギャングを相手に壮絶な銃撃戦を繰り広げる。彼女はフロアを制圧しながら最上階へ進み、ついにダミコの元へ到達する。
一方のデイヴはジェットパックを装着して空中から突入し、ビッグ・ダディの残した重火器で援護を行う。クリスとの格闘の末に彼を倒し、ヒット・ガールの危機を救う。
最後はデイヴがロケットランチャーを発射し、フランク・ダミコをビルごと吹き飛ばして殺害する。こうして巨大犯罪組織は崩壊する。
事件後、ミンディはビッグ・ダディの友人マーカスに引き取られ、普通の少女として学校へ通い始める。デイヴもケイティと正式に恋人同士となり、新しい日常を手に入れる。
しかし父を失ったクリスは復讐心を燃やしていた。新たなヴィランとして生まれ変わった彼は、キック・アスへの報復を誓っておしまい。
本作は数多くのヒーロー映画の中でも、とにかくヒット・ガールの存在感が圧倒的な作品でした。開始からしばらくして登場する彼女のアクションシーンは衝撃的で、小柄な少女が大人の犯罪者たちを容赦なくなぎ倒していく姿には強烈なインパクトがあります。銃撃戦や近接戦闘の演出も非常にスタイリッシュで、残酷な描写を含みながらも不思議な爽快感がありました。
特にヒット・ガール初登場シーンは映画全体の空気を一変させます。それまでの物語は、コミック好きの冴えない高校生がヒーローごっこをして失敗を繰り返すコメディ色の強い展開でした。しかしヒット・ガールが現れた瞬間から作品は一気に過激なバイオレンスアクションへと変貌します。その落差が非常に面白く、観客の記憶に強く残る場面になっています。
また、ビッグ・ダディとヒット・ガールの親子関係も印象的でした。娘に平然と銃を向けて訓練するという常軌を逸した教育方法には驚かされますが、それと同時に二人の間には確かな信頼関係も存在しています。復讐だけを目的に生きてきた父親と、その価値観の中で育った娘という歪な関係性が独特の魅力を生み出していました。
一方で、主人公デイヴのドラマについては少し弱く感じる部分もありました。ナイフで刺され、自動車にはねられるほどの大事故を経験しながら、それでもヒーロー活動を続ける理由については説得力が足りないように思えます。普通の高校生が命の危険を顧みず活動を続ける動機がもう少し深く描かれていれば、より感情移入できたかもしれません。
また、ビッグ・ダディとヒット・ガールがどのように生活費を確保していたのか、長年の復讐計画をどう維持していたのかなど、細かな部分が気になる作品でもありました。さらに、あれほど慎重に準備を進めてきた二人が意外なほど簡単に罠にはまってしまう展開には少々引っかかるものがありました。
それでも、本作の魅力は圧倒的な勢いにあります。ヒーロー映画の常識を壊しながら、コミック好きの少年の夢と現実を描き、そこへ過激なアクションとブラックユーモアを加えた構成は非常に個性的でした。
暴力描写や流血シーンが多いため好みは分かれる作品ですが、ヒット・ガールという映画史に残る強烈なキャラクターを生み出しただけでも価値のある一本だと思います。痛快さと過激さが同居した異色のヒーロー映画として、最後まで楽しめる作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2011/03/20 Blu-ray 2016/06/20 Hulu 2026/06/20 DVD
| 監督 | マシュー・ヴォーン |
|---|---|
| 脚本 | ジェーン・ゴールドマン |
| マシュー・ヴォーン | |
| 原作 | マーク・ミラー |
| ジョン・S・ロミタ・Jr |
| 出演 | アーロン・ジョンソン |
|---|---|
| ニコラス・ケイジ | |
| クロエ・グレース・モレッツ | |
| マーク・ストロング |


