映画【私は貝になりたい(2008)】感想(ネタバレ):命をかけた嘆願と希望の光

kaininaritai
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●こんなお話

 BC級戦犯裁判に裁かれる男の話。

●感想

 床屋として家族と平穏に暮らしていた主人公のもとにも、戦争の影がじわじわと近づいてくる。近所の男たちが出征し、やがて主人公にも赤紙が届く。覚悟を決めて頭を丸め、床屋を辞めて流浪の旅へ。夫婦の出会いや、やがて土佐にたどり着くまでの道のりが前半で描かれていく。

 軍に入ってからは、理不尽な命令に従うことが当たり前のような日々。上官からの暴力、戦友とともに殴られる日々、空襲に怒る司令官の姿。爆撃機から落下傘で降りてきた米兵を「適切に処置せよ」という命令が下り、末端の兵士にまでその命令が伝わる。そして、「もう命は長くない」と判断された乗組員を主人公たちが刺突するよう命じられ、主人公は嫌々ながらもそれに従おうとする。

 戦後、再び床屋に戻っていた主人公のもとに憲兵が現れ、逮捕。連行された先は巣鴨プリズン。何が何だかわからないまま裁判が始まるが、通訳の限界や日本軍独特の思想がうまく伝わらず、もどかしさばかりが残る。主人公には死刑判決が下され、ただただ茫然とする。

 死刑囚としての生活が始まり、同房の仲間との会話、連れていかれる仲間、そして事件の司令官からの呼びかけなど、静かな日々の中でも緊張感が続く。司令官は「自分の罪はすべて背負うが、部下は無罪であるべき」と話し、主人公にも助命嘆願を勧める。

 奥さんは署名活動を始める。汽車や船を乗り継ぎ、池袋駅へ。そして全国を歩いて200人の署名を集めるモンタージュが流れる。日本の四季とともに、外の世界が見えることで、独房ばかりの映像に変化が生まれていました。ただ、このパートがあったことで逆に少し長く感じたり。

 116分あたりから、音楽が大音量で流れていた前半から一転、主人公と牧師の静かな対話へと変わる。この静けさが非常に効果的で、心に染みる時間になっていました。ラストでは、「来世は私は貝になりたい」という言葉を残し、ショック状態で死刑執行。中居正広さんの目の虚ろさが、ホラーのような迫力を放っていて強烈な印象を残すものでした。

 全体を通して音楽が鳴りっぱなしだったのは少し気になりましたが、それでも爆撃シーンや焼け野原となった東京の映像は迫力があり、130分の長さも気にならなかったです。主人公が助かってほしいと願いながら観られる、重くも見応えある作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2009/10/02 DVD

監督福澤克雄 
特撮監督/特技監督尾上克郎 
脚本橋本忍 
原作加藤哲太郎
出演中居正広 
仲間由紀恵 
柴本幸 
西村雅彦 
平田満 
マギー 
加藤翼 
武田鉄矢 
伊武雅刀 
片岡愛之助 
名高達男 
武野功雄 
六平直政 
荒川良々 
泉ピン子 
浅野和之 
金田明夫 
山崎銀之丞 
梶原善 
織本順吉 
笑福亭鶴瓶 
草なぎ剛 
上川隆也 
石坂浩二 
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