映画【ワイルド・ヒーローズ 暗黒街の狼たち】感想(ネタバレ):銃撃と裏切りが交差する、香港ノワールの濃密な跡目争い劇

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●こんなお話

 親分が何者かに殺されたので、跡目争いが勃発したマフィアの話。

●感想

 三国志の「桃園の誓い」を人形劇で演じる舞台を、マフィアの面々が静かに見つめていた。物語はその帰り道から始まる。突如として親分が何者かに襲撃され、命を落とす。騒然とする中、子分たちはそれぞれの思いを胸に葬儀に集まり、親分の死を悼んでいた。

 そこへ弁護士が現れ、遺言書の内容を読み上げる。次期組織の長として指名されたのは、親分の意外な後継者だった。その決定に納得できない子分たちが反発しはじめ、組織内に不穏な空気が漂い始める。

 物語は、ヤクザ映画でおなじみの「跡目争い」を軸に展開する。指名されたものの気乗りしない男、なぜ自分ではないのかと不満を募らせる者、すでに堅気になって家庭を築いていた者。彼らの妻や恋人たちの存在も交錯し、組織の中だけでなく、家庭や私生活の中にも葛藤が滲んでいく。

 やがて銃撃戦が始まり、物語は徐々に暴力の渦へと引き込まれていく。主人公は親分の座に就くことを一度は受け入れるが、その直後、最愛の妻が車に轢かれ重傷を負い、身ごもっていた命も失う。深い悲しみと怒りのなか、主人公は敵対する組の親分を襲撃し、激しい銃撃戦が繰り広げられる。

 しかし、事件の背後には思わぬ裏切りが潜んでいた。内部からの犯行が疑われ、組織内の信頼は崩れ始める。チャウ・シンチー演じる若い構成員とその兄貴分が重要な役割を果たし、物語はさらに複雑さを増していく。

 元マフィアで今は堅気になった主人公が、単独で真相を追い、銃撃戦へ突入する場面も描かれる。そこに現れるのが、かつての親分だった主人公。互いに助け合う姿は、あまりに様式的で、かっこよさを狙いすぎているようにも映るが、そのやや空回り気味な雰囲気こそが90年代香港映画の魅力ともいえる。

 銃撃戦は序盤、中盤、そして終盤と何度か挿入される。中でもクライマックスでは、主人公の子分たちが一堂に会し、お屋敷で大規模な戦闘が繰り広げられる。銃を花瓶などに隠して臨む若者の姿は、コメディのようにも見え、その存在意義にはやや疑問が残る。

 それでも、全体を通して香港ノワール特有の濃密な空気と、裏切りと忠義の交錯する人間模様を描いた作品として、一定の見応えを感じることができました。人物の行動や展開が直情的で荒削りな部分も多かったですが、だからこそ物語の熱量や勢いが際立っていたように思います。激しい銃撃戦の合間に見える男たちの信念や苦悩も、しっかりと描かれていた印象です。

☆☆☆

鑑賞日:2021/12/16 DVD

監督ウー・マ 
ジョン・ウー
脚本ツイ・ハーク 
製作ツイ・ハーク 
出演ダニー・リー 
チャウ・シンチー 
ティン・ロン 
クオリー・ウォン 
トン・ピョウ 
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