映画【呪詛】感想(ネタバレ):ビデオカメラ映像で描く独特の恐怖体験

Incantation-(2022)
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●こんなお話

 呪いがかかったらしい母娘がどうして呪いがかかったのかとそれを解こうとするべく頑張る話。

●感想

 物語は回転する観覧車の映像や地下鉄の走行映像から始まります。どちらの方向に動いているのかを説明しながら、主人公が6年前のタブーについて告白する場面へと続きます。主人公に関わった人々が次々と亡くなっていくモンタージュ映像が挿入され、両親や制服警官たちがショッキングな出来事に直面します。

 物語はやがて、里子に出していた娘を引き取る過程や施設での生活を、まるでビデオカメラで記録しているかのように丁寧に描写していきます。夜、自宅での撮影中に停電が起きたり、何か物音がしたり、娘が奇妙な言動を見せたりと、徐々に恐怖体験が深まっていきます。娘の不可解な言葉に戸惑い、医者に相談する場面も緊張感を増していました。

 一方で、6年前に主人公とその友人たちが超常現象調査隊として記録したビデオ映像が挿入され、当時の出来事が徐々に明かされていきます。彼らは「入ってはいけない地下道」へと楽しげに足を踏み入れますが、やがて仲間の親族がいる村に辿り着き、そこで怪しげな儀式が行われていることが判明します。

 全編を通してビデオカメラ映像で撮影されたようなスタイルが貫かれ、黒沢清監督の『キュア』やM・ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』を彷彿とさせる独特の怖さが生まれています。クライマックスでは、画面が静止し、まじないの声だけが延々と響き渡るという挑戦的な演出も見られ、非常に印象深かったです。娘を助けようとする主人公の行動がカメラに語りかける形で描かれ、母の愛情の強さとその裏にある身勝手さが丁寧に浮かび上がります。

 ただし、ビデオカメラの映像が断片的で時間軸が前後するため、話の流れがやや切れ切れに感じられる部分もありました。また、超常現象調査隊の若者たちが体験する恐怖が映像的に伝わりにくく、叫び声が響くシーンが多いものの、視聴者の感情が動かされることは少なかった印象があります。

 さらに、物語には信仰や文化、宗教に関わる専門用語が多く登場します。「ホーッホシオンイーシーセンウーマ」「仏母」「チェン氏宗族」「八方天」といった言葉の説明は挿入されているものの、理解するのが難しく、物語の深い部分に入り込む妨げになる場合もありました。

 映像に目が疲れてしまう瞬間もあり、登場人物の中で魅力的に感じられるのは主人公と娘だけであり、その他の人物たちの恐怖体験が感情に響きにくかったのは残念でした。全体としては独特な撮影手法や恐怖の演出は興味深いものの、物語に深く没入するのはやや難しい作品に感じました。

☆☆☆

鑑賞日:2022/07/09 NETFLIX

監督ケヴィン・コー
脚本ケヴィン・コー
出演ツァイ・ガンユエン
カオ・インシュアン
シーン・リン
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