映画【ホテル・ムンバイ】感想(ネタバレ):極限状態で問われる人間の本性──息もつかせぬ脱出劇が胸を打つ!

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●こんなお話

 インドで起きた同時多発テロを描いた話。

●感想

 若者グループがボートで海を渡り、ムンバイ市内へ上陸するシーンから始まります。駅での無差別銃撃事件を皮切りに、やがてターゲットは名門「ホテル・ムンバイ」へと移っていきます。

 ホテルでは、普段通りの優雅な一日が始まっていました。主人公のホテル従業員は、料理長から働きぶりを厳しく叱られながらも懸命に仕事をこなしています。宿泊しているのは、スイートルームに滞在中のアメリカ人夫婦と赤ん坊、自己中心的なロシア人富豪など、さまざまな人々。地元のレストランではバックパッカーたちが会計で話し合っていたその瞬間、突然爆発と銃撃が発生。状況は一変します。

 人々はホテルへ避難してきますが、同時にテロリストたちも混乱に紛れてホテル内へ侵入。ロビー、レストラン、客室と、次々に襲撃を開始していきます。子どもを部屋に残してきたアメリカ人夫婦、赤ん坊とともに逃げるベビーシッター、わずかな部下を率いて突入する地元警察官、そして命がけで助けに向かうアメリカ人宿泊客など、それぞれの視点で描かれる「極限の人間模様」がスリリングに展開されます。

 一方で、テロリストたちはどこか幼さを残す少年兵たち。彼らは外部からの電話指示に従い、命令どおりに行動し、豪華なホテルに戸惑いながらも、容赦なく人命を奪っていきます。そんな彼らの姿には「なぜここまで人は従順になってしまうのか?」という深い問いが浮かび上がってきます。

 クライマックスでは、ホテルに火が放たれ、脱出を試みる人々とテログループ、特殊部隊との銃撃戦に突入。最終的に制圧され、生き残った人々の再会が描かれて物語はおしまい。

 アメリカ人夫婦と赤ん坊、ロシア人富豪、従業員、警察、そして少年テロリストたち。それぞれのドラマが交差する「グランドホテル方式」の群像劇であり、脱出劇としての緊張感も途切れず続きます。乾いた銃声のリアルなバイオレンス描写も印象的で、約2時間、張り詰めた空気の中に引き込まれ続けました。

 冒頭の平穏な日常から一転し、わずか数分で襲撃に突入するスピード感。そして、そのまま一気に最後まで駆け抜ける構成は見事です。物語のリアリティと緊張感、そして人間の極限状態での振る舞いを描いた、見ごたえある一作でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2020/03/03 DVD 2024/12/23 Amazonプライム・ビデオ

監督アンソニー・マラス 
脚本アンソニー・マラス 
ジョン・コリー 
出演デヴ・パテル 
アーミー・ハマー 
ナザニン・ボニアディ 
ティルダ・コブハム・ハーヴェイ 
アヌパム・カー 
ジェイソン・アイザックス 
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