●こんなお話
ヤクザの兄貴が死んだと思ったら遺体がどっか行ったので探し回る話。
●感想
あるカフェで、ヤクザの幹部のひとりが店の外にいる犬を見て突然こう言い出す。「あれはヤクザを殺すように仕向けられたヤクザ犬だ」と。そしてなんの前触れもなく、犬を殴り殺してしまう。この異常な行動が、物語の狂った世界の始まりを感じさせます。
その後、主人公はその幹部の兄貴と一緒に車に乗って移動しているが、実はこの兄貴を“処分せよ”という命令を親分から受けていた。すると、兄貴が突然「後ろの車はヤクザを殺すために送り込まれたヤクザカーだ」と言い出し、銃を取り出そうとする。それを慌てて止める主人公。しかし、気づくと後部座席にいたはずの兄貴はすでに死んでいて、主人公はさらに混乱する。
名古屋の喫茶店で電話を借りようと立ち寄ると、頼んでもいない茶碗蒸しを出してくるマスター、不思議な常連客たちが登場。外を見れば、さっきまでそこにあったはずの兄貴の死体が消えている。喫茶店の人々に聞いても要領を得ない。
親分に連絡すると「名古屋で協力してくれるヤクザを探せ」とだけ言われ、お寺を探したり、警察に尋ねたりするが手がかりは掴めない。そんな中、パンクして立ち往生していたところ、顔の色素が半分ない男が現れ、車の修理を買って出てくれる。彼に連れられて行くと、そこには協力者として紹介されていた親分がいて、一緒に探すのは明日からだということで旅館に泊まることに。
しかし、その旅館もまた一癖ある場所だった。女将がいきなり風呂に入ってきて胸を吸わせようとしてくるなど、どこか常軌を逸している。翌朝、昨日の喫茶店を再訪すると、そこで協力者のヤクザと常連客が幼馴染だということが判明。その話で盛り上がる一方で、別の男が「米を探している」という言動が引っかかり、調べていくと自分が泊まっていた旅館にその男も泊まっていたことが判明する。
再び旅館に戻り、その男の部屋に入ってみると、牛の頭をした存在が現れて手紙のようなものを渡してくる。それには「処分場へ行け」と記されていた。指示された場所へ向かうと、かつて一緒にいた車がぺしゃんこに潰されていて、兄貴の皮がその中にあるのを発見する。さらに車に戻ると、女性の姿をした人物が現れ、「自分が兄貴だ」と告げてくる。しかも二人しか知らないはずの過去の出来事を語りだし、主人公は驚愕する。
仕方なくその女性と行動をともにし、親分に紹介するが、親分はその女性を自分のものにしようと目論み、部屋へと連れていく。主人公はそれを止めようと部屋に突入し、親分に殴られるも逆に突き飛ばして殺してしまう。
その後、主人公はその女性=兄貴と関係を持つ。すると体がくっついて離れなくなってしまうが、何とか分離したその時、兄貴が再び産まれる。そして物語は、主人公・兄貴(女性)・産まれたばかりの兄貴の3人が、どこか幸せそうに暮らす様子を描いて終わる。
不条理で摩訶不思議な展開の連続に目が離せない作品でした。不思議の国のアリスに迷い込んだような、閉ざされた異空間のような世界観が心地よく、奇妙なキャラクターたちと出会い続ける物語は楽しく観られました。ただ、全体で120分を超える上映時間の中盤から後半にかけては少し冗長に感じる部分もあり、もう少しテンポがよければという気持ちもあります。それでも、ラストの再誕シーンは強烈で、しっかりと記憶に残る作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2023/12/17 DVD
監督 | 三池崇史 |
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脚本 | 佐藤佐吉 |
出演 | 曽根英樹 |
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曽根晴美 | |
吉野きみ佳 | |
哀川翔 | |
石橋蓮司 | |
哀川翔 | |
吉野きみ佳 | |
間寛平 |