●こんなお話
天才少女を巡って大人たちが親権を争う話。
●感想
冒頭から、少女の数学に対する天才的な能力が明かされていき、その才能を育ての親代わりであるおじさんが「能力は使ってはいけない」と、まるでスーパーヒーローのように隠しながら暮らしているという日常が描かれます。この設定だけでも、主人公たちの生活ぶりや人間関係が魅力的で、見ていて楽しく、物語にぐっと引き込まれものでした。
中でも、夕焼けの中で主人公の少女とおじさんがシルエットだけで神様について語るシーンは、静かで美しく、これだけでもこの映画を観てよかったと思えるほど印象に残りました。
序盤は「天才少女もの」として進んでいきますが、映画の本質はそこではなく、数学はあくまで物語のきっかけやモチーフにすぎず。中心にあるのは「本当の幸せとは何か?」を登場人物たちがそれぞれに考え、意見をぶつけ合いながら、成長していくヒューマンドラマでした。
主人公である少女は、普通の子どもとしてのびのびと生活したいと願い、祖母はその才能を最大限に生かすべきだと考えて、親権を争うことになる。育ての親であるおじさんと少女が築いた穏やかな暮らしを知っているだけに、2人が引き離されていく展開はとてもつらく、まるで『クレイマークレイマー』のような強烈な感動をもたらすものでした。これはずるいくらいに心を揺さぶる展開。
少し気になったのは、物語の序盤で描かれた小学校の同級生の男の子が、後半まったく関わってこない点。せっかく登場したのに、そのまま役割を終えてしまったのはもったいなかったです。
とはいえ、最終的には「どんな考え方をするにせよ、子どもが幸せであることが何より大事だ」という、教育や育児の根本に立ち返るメッセージがしっかりと伝わってくる作品で。心が温かくなり、自分自身の価値観も見つめ直せる、そんな映画でした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2017/12/05 TOHOシネマズシャンテ
監督 | マーク・ウェブ |
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脚本 | トム・フリン |
出演 | クリス・エヴァンス |
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マッケナ・グレイス | |
ジェニー・スレイト | |
リンゼイ・ダンカン | |
オクタヴィア・スペンサー |
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