映画【復讐するは我にあり】感想(ネタバレ)

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●こんなお話

 死刑囚の半生の話。

●感想

 昭和の実在の連続殺人犯をモデルにした映画で、何といっても緒方拳さん演じる主人公の圧倒的存在感が凄いです。柔和な笑顔を見せたかと思いきや、冷酷な顔を見せる。何故、悪魔の申し子とまで言われた殺人鬼が生まれたのか? 環境なのか? 生来のものなのか? この映画を見て何故、主人公が殺人をするのか理由が描かれません。本人も「何で殺したのかわからない」と言う。

 主人公の心理を一切描写せず、離れた位置から観察する客観的な感覚の映画で、何故こういう行動をとるのかというのは観客が想像する映画でした。

 実在の事件としてあったことも驚きですし、殺人シーンも犯人と被害者がうなりながらお互いがもみ合いだらだらと血を流しながらの殺人のショッキングさ。なかなか死なない人間を見させられます。異様な生生しさです。冒頭の2人の殺人シーンもショックですが、池袋の弁護士を殺害した後、タンスの中の死体が映るショックさ。この時のタクシーで弁護士に「すき焼き食いましょう」と言って、次のシーンで1人で肉を買っている主人公。クギを買って家に帰ると、タンスの中に死体があるという流れも見せ方として素晴らしい流れです。
 そして浜松の旅館の親子の殺害するときの緒方拳さんが炬燵に入って、ガリガリと机を削るときの怖さったらないです。

 主人公の家族も重要な役として出てきて、三國連太郎さん演じるクリスチャンの父親。敬虔なクリスチャンでありながら息子の嫁に欲望を抱いてしまう。主人公が子どものときには、軍人にひざまずいてしまう。息子として父に失望する。息子を溺愛する母をミヤコ蝶々さん。
 
 物語の中盤から浜松の旅館を舞台となりますが、ここから時間軸がわかりづらくなってしまったのが残念でした。
 とはいえ、殺人犯と知りながら今の状況から抜け出したいと主人公に惹かれるハルを演じる小川真由美さん。そして殺人の罪を持つ母の清川虹子さん。競艇場から帰り道の主人公とのやりとりが印象的です。
 
 圧倒的な日本映画を見せられて、どっと疲れる映画でした。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2013/03/08 DVD

監督今村昌平 
脚本馬場当 
原作佐木隆三 
出演緒形拳 
三國連太郎 
ミヤコ蝶々 
倍賞美津子 
小川真由美 
清川虹子 
殿山泰司 
垂水悟郎 
絵沢萠子 
白川和子 
浜田寅彦 
フランキー堺 
北村和夫 
火野正平 
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