映画【炎の少女チャーリー】感想(ネタバレ):炎の少女と父がたどる逃避行、超能力と家族の物語

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●こんなお話

 投薬実験で超能力を得た両親とその子供が政府の組織から追われて逃げる話。

●感想

 父親と少女が夜の都会を駆け抜ける。スーツ姿の男たちの足音が迫ってくるなか、ビルの谷間を縫うように走る2人。追っ手をまくためタクシーに乗り込み、その車内で息を整える父親の目に過るのは、かつての記憶だった。あの頃、生活費の足しにと参加した薬の臨床実験。何人かと一緒に集められ、注射器が腕に差し込まれた瞬間、部屋の空気が変わる。次々と倒れる参加者たち、床に広がる赤い液体。そして一人、彼の目の前で笑っていた女性との出会い。それが、後に彼の妻となり、娘・チャーリーの母となる。

 時が流れ、チャーリーはすくすくと成長していた。感情が高まると、火を生み出す力を持っているらしく、彼女の育児は特殊な訓練付きだった。父と母が一緒になって、彼女の力を制御するための毎日。でも、そんな家庭にも外からの影が忍び寄る。政府の上層部が、この火の力を兵器として利用できないかと画策し始めていた。

 ある日、父が帰宅すると、家の中が静まり返っている。嫌な予感がして家中を探し回ると、妻が命を落とした姿で横たわっていた。その時、ちょうどチャーリーが誘拐されそうになっている。父は超能力を駆使して相手を操り、視覚を奪い、周囲の記憶を消して脱出。娘とともに再び逃避行の旅へと出る。途中、山奥の別荘に身を隠すが、親切そうに見えた地元の夫婦が実は政府の関係者で、居場所はすぐに漏れてしまう。

 彼らを追う殺し屋、眼帯をした男がまた強烈なキャラクター。捕らえたチャーリーを自分の手元に置き、育てた後に殺したいと語るその姿は、笑みを浮かべながら語る分、余計に狂気を感じさせる。やがて父娘は捕まり、政府の施設で監禁される。チャーリーの能力を覚醒させようと、研究員たちがあの手この手で近づいてくる。殺し屋は掃除夫のふりをしてチャーリーに近づき、ベトナム戦争の記憶を語りながら少しずつ心の隙間に入り込んでいく。

 一方で父親も、薬物投与で能力を消されそうになるが、力を振り絞って偉い人間の意識を操り、脱出の糸口を探る。そして娘と合流する馬小屋で再会。そこに政府の人間も集まり、銃撃戦となるなか、娘は父から「もう隠さなくていい、力を解き放て」と告げられる。

 そこからがクライマックス。炎の少女、チャーリーの真の力が目を覚まし、彼女の周囲に火の玉が舞い始める。巨大な炎が施設を飲み込み、大爆発が続く。その光景は、もはや超能力バトルというよりは災厄そのもの。爆破、火柱、瓦解していく建物の連続で、映像の迫力がスクリーンからあふれていたと思います。

 ラストのやり取りでは、父の愛情と、少女の中に宿る強大な力とのバランスが描かれ、超能力者として生まれた者の運命と、その背後にある人間としての感情の深さに触れる余韻がありました。母親の能力についてはあまり語られなかったですが、娘に受け継がれたものがそれを物語っているようでもありました。

 火炎と超能力と逃避行。そして狂気じみたキャラクターとの交錯。110分という少し長めの上映時間でも、熱量が途切れず、最後まで火の力で押し切る娯楽性の高い一本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2022/07/26 DVD

監督マーク・L・レスター 
脚本スタンリー・マン 
原作スティーヴン・キング 
出演デイヴィッド・キース 
ドリュー・バリモア 
ジョージ・C・スコット 
マーティン・シーン 
ヘザー・ロックリア 
アート・カーニー 
ルイーズ・フレッチャー 
フレディ・ジョーンズ 
モーゼス・ガン 
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