映画【疫起 エピデミック】感想(ネタバレ):医療現場のリアルと葛藤を描く感染症ドラマ、医師たちの決断と人間ドラマに注目

Eye of the Storm
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●こんなお話

 台北総合病院でSARS患者が発生して病院自体が隔離されて病院内の人たちの話。

●感想

 「何か感染症が流行っているらしいね」と世間話のように語られつつも、日常が淡々と進んでいく冒頭。主人公の医者は手術を終えたあと、子どもに会うためにタクシーに乗るが、病院からの呼び戻しの連絡で引き返す。タクシー運転手も彼に付き添って戻る。

 香港の病院へ行きたいという夢を持つ若手医師と、彼の恋人でもある同僚医師が将来について語り合う場面など、複数のキャラクターが交差する“グランドホテル方式”の群像劇として、序盤は楽しめました。婦長が風邪のような症状を見せる描写や、記者が主人公にSARSについて質問してくるシーンで、徐々に緊迫感が高まっていきます。

 やがて病院が封鎖され、院内パニックへ。ニュースでSARS患者の存在が明かされ、物語は一気に非日常へと加速する。主人公は隔離病棟に弁当を届けに行ったり、責任者たちと状況を確認したりと奔走する。

 若手医師は、SARS患者に近づいたという理由で周囲から差別を受け、自ら隔離病棟へ移る決意をし、恋人とも離れ離れに。婦長の子どもが面会できずに悲しむ場面や、医療従事者が極限状態に置かれる描写も重ねられていきます。

 後半は、感染の“最初の患者”を探すサスペンス風の展開に。主人公が記者とともに調査を進め、配管工の存在が浮かび上がる。そして、自分自身もその患者と接触していたかもしれないと気づく。

 クライマックスは、出産と外科手術が同時に行われる中、主人公が発熱しながらも手術を成功させるシーン。感情が交錯し、隔離病棟の若手医師と無言でアイコンタクトを交わすラストでおしまい。

 日常から非日常へと一気に転換する序盤の構成はスムーズで、群像劇としても見ごたえがありました。ただし、主人公のやや自己中心的な性格が魅力でもあり、作品全体に共感しづらい部分も。カットバックによる出産と心臓マッサージの演出は象徴的だが、何を見せたいのかが曖昧で感情が置き去りにされたような印象も残りました。

 感染症による隔離の中で揺れる感情や人間関係が丁寧に描かれる一方、サスペンスや見せ場に欠ける部分もあり、個人的には退屈に感じる場面も多かった作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2023/09/14 NETFLIX

監督リン・ジュンヤン
出演ワン・ポーチエ
ツェン・ジンホア
シュエ・シーリン
シエ・インシュエン
クロエ
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