映画【墨攻】感想(ネタバレ):籠城戦と人間ドラマの戦術アクション

a-battle-of-wits
スポンサーリンク

●こんなお話

 中国の戦国時代に弱小国が大国に攻められて、そこに助っ人が来て平和とは戦うとはを悩む話。

●感想

 紀元前370年頃の戦国時代、中国の小国・梁は大国・趙の将軍・巷淹中率いる十万の軍勢に包囲される。人口四千ほどの小国に抗う力はなく、梁王は降伏を考え始めている。そこへ墨家の思想を体現する戦術家・革離が単身現れる。墨家は侵略を否定し、防衛によって弱き国を救う集団であり、革離は一か月持ちこたえれば趙軍は補給が尽き撤退すると進言し、防衛の全権を任される。

 革離は城門前に巧妙な罠を設け、趙軍の先鋒を壊滅させる。弓兵を高所に配置し、投石器と火攻めを組み合わせて攻城兵器を破壊する。狭い通路へ敵を誘い込み、落石や油を用いた攻撃で兵力差を覆していく。民衆にも武器の扱いと隊列を教え、兵士と民を一体化させた防衛網を築く。巷淹中は地下道を掘って侵入を図るが、革離は地面の振動から察知する。

 戦いが長引くにつれ、城内では革離を支持する声が高まり、梁王と側近たちは権威の失墜を恐れるようになる。革離は民を守ることを最優先に行動するが、王は彼を脅威と見なし、革離に味方する者たちを拘束して拷問にかける。革離自身も捕らえられ処刑寸前となるが、若き王子が救い出す。しかし王子は直後の混戦で矢に射られ命を落とす。

 趙軍は気球を用いた夜襲を敢行し、総攻撃によって城内を占領する。革離は城に投降するよう求められるが、仲間の制止を振り切り単身で巷淹中の前に現れる。和平を語り合う時間を稼ぐあいだに、梁側は水路を利用した反撃を準備し、一気に攻勢へ転じる。補給を断たれた趙軍は混乱し、巷淹中は撤退を余儀なくされる。梁王は勝利を宣言する。

 戦いの後、革離は権力にも名誉にも執着せず城を去る。再び戦乱の地へ向かうことなく、争いを止める思想を説きながら静かに生きる道を選んでおしまい。


 わずかな兵力で十万の大軍を迎え撃つという設定は非常に魅力的で、序盤から中盤にかけての籠城戦は見応えがありました。罠や地形を生かした防衛戦術の数々は視覚的にも楽しく、エンターテインメントとして素直に引き込まれます。特に攻城兵器を破壊する場面や地下道を察知するくだりは緊張感が高く、戦術劇としての醍醐味を味わえました。

 一方で後半は城内の権力争いに比重が移り、物語の熱量が変化します。無能な王と側近が英雄を警戒する構図は理解しやすい反面、もう一歩踏み込んだ人物造形があれば、さらに深みが出たのではないかと感じました。内部対立が続く展開は重厚ではありますが、籠城戦の緊迫感とは質が異なり、テンポが緩やかになります。

 趙の将軍・巷淹中を演じたアン・ソンギの存在感は際立っており、立ち姿や視線だけで威圧感を表現していました。革離との思想的対立や一騎打ちがより強く描かれていれば、両雄の関係性がさらに印象深くなったと感じます。

 また、墨家という思想集団の背景説明が簡潔であるため、革離がなぜ命を懸けてまで小国を救うのか、その動機をもう少し掘り下げてほしかった思いもあります。戦争のプロフェッショナルである革離が犠牲を前に葛藤する姿は人間味を与える要素ですが、変化の過程が急に映る部分もありました。

 それでも前半の攻防戦の完成度は高く、歴史スペクタクルとしての迫力は十分に堪能できます。壮大な戦闘と思想の対立を同時に描こうとした意欲作であり、戦国時代を舞台にしたアクション大作として記憶に残る一本だと思いました。

☆☆☆

鑑賞日: 2015/12/26 Hulu 2026/03/20 U-NEXT

監督ジェイコブ・C・L・チャン 
脚本ジェイコブ・C・L・チャン 
原作森秀樹 
出演アンディ・ラウ 
アン・ソンギ 
ワン・チーウェン 
ファン・ビンビン 
ニッキー・ウー 
チェ・シウォン 
ウー・マ 
タイトルとURLをコピーしました