●こんなお話
火・水・土・風が住む世界で火と水が出会って恋をしたり親の敷いたレールに行くべきか行かないべきか悩む話。
●感想
火の国から「エレメントシティ」へと移民としてやってきた火の住民の夫婦。新天地で雑貨店を開いて、やがて近隣にも火の住民が増え、子どもにも恵まれる。両親は、娘が自分たちの店を継いでくれることを願って日々を送っている。
時が経ち、娘は成長して父と一緒に店を切り盛りしているが、時折やってくるクレーマーのような客に対して怒りが抑えられず、感情が爆発してしまうことがある。そのため、父はまだ娘にすべてを任せる決断ができずにいた。それでも年齢的にも体力的にも限界を感じており、娘に一度セールの日の営業を任せてみることにする。
張り切って臨んだセール当日。多くの客が詰めかける中で、娘は怒りをこらえきれず、地下で癇癪を爆発させてしまい、その衝撃で配管に亀裂が入る。すると水が噴き出し、そこから水の住民である検査官が現れる。彼は、店の配管が規定を満たしていないとして営業停止の報告をしようとする。主人公は必死でそれを阻止しようとするが、結局は届け出が出され、店は営業停止処分になってしまう。
その後、街に水が入り込んできた原因を調べたところ、街と川を隔てる壁に亀裂があり、そこから水が流れ込んでいた。主人公たちは協力して土嚢を積み、なんとか被害を食い止めようとする。
水の検査官と火の娘は次第に親しくなっていき、心を通わせるようになる。モンタージュで描かれる二人の交流や、水の住民の家に招かれて一緒に食事をする場面、娘のガラス細工の才能を見出してくれる水の家族との出会いなど、異なる要素同士の理解と絆が丁寧に描かれていく。娘は、父の後を継ぐことが自分の使命だと信じていたが、自分の才能や新しい夢に気づいて戸惑い始める。そんな中、母が娘たちの関係に気付き、占いを行うという展開も加わる。
やがて水の侵入を防いでいた壁が決壊し、大量の水が街に流れ込んでくる。主人公は、店の大切な“火”を守ろうとたったひとりでお店に飛び込む。そこへ水の青年が助けに入り、彼は彼女を救おうとして自身が蒸発してしまう。しかし、彼は水の粒子から再生し、二人は再び巡り合う。
物語のラストでは、主人公の店は常連客たちが支えてくれるようになり、主人公と水の青年は新たな世界を見に旅立つことを決め、両親と別れを告げる。
火と水という決して交わらない存在が惹かれ合い、文化や価値観の違いを乗り越えていくラブストーリーとしても、また親子の対立と和解というテーマの物語としても、わかりやすく丁寧に描かれていて、映像の美しさと共に楽しめる作品だと思いました。
ただし、全体的な内容は既視感があり、新鮮味には欠ける印象も。火と水という根本的な障害も、ややあっさりと越えてしまっているように感じられ、クライマックスの盛り上がりにはもう一段階欲しかったです。
☆☆☆
鑑賞日:2023/09/04 イオンシネマ座間
監督 | ピーター・ソーン |
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脚本 | ジョン・ホバーグ |
キャット・リッケル | |
ブレンダ・シュエ | |
原案 | ピーター・ソーン |
ジョン・ホバーグ | |
キャット・リッケル | |
ブレンダ・シュエ | |
製作総指揮 | ピート・ドクター |
出演(声) | リア・ルイス |
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ママドゥ・アティエ | |
ロニー・デル・カルメン | |
シーラ・オムミ | |
ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ | |
キャサリン・オハラ | |
メイソン・ウェルトハイマー | |
ジョー・ペラ |