映画【しとやかな獣】感想(ネタバレ)

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●こんなお話

郊外の団地に住む一家4人がいろんな人からあの手この手で金を巻き上げて生活していく話。

●感想

  冒頭、タイトルクレジットと共に団地の外から室内を映していて、そこに伊藤雄之助さんと山岡久乃さんが何やら模様替えのようなことをしている。お客さんがこれから来る様子。ここから不思議な画角や撮影にやられてしまいました。さらにそこから息子の会社の人たちがやってきて、息子が会社の金を横領しているらしいことがわかってくる。夫婦は平身低頭して会社の人に対応して返す。このときの会社の人間のピノサクなる人物も一体何だったんだというアメリカ人風日本人でした。息子が帰ってくると横領した金で夫婦が生活しているらしいことも分かってきて、どうやらこの家族はなかなかの食わせ物だとわかってきて面白いです。娘は人気作家のお妾さんとして、この作家の金もなんやかんやもらっている。2号さんとしての生活を両親はおすすめして、作家さんの金を搾り取るように娘を利用している。

 舞台劇のようなひたすら団地の中だけで視点が動いて、ひょうひょうとパラサイトな生活をしていく一家4人の会話劇が面白くて、映像も不思議な視点で惹きつけられる90分でした。空が異様な雰囲気になったり、息子と娘がいきなり踊りだしたりと様々な映像表現が繰り出されてました。

 息子は会社の会計係のシングルマザーに金を絞り出されていて、お金が集まったシングルマザーは旅館を開くことになったので勝手に別れる話をしにやってきて、息子は怒る。このシングルマザーも怪物で会社の役員とも肉体関係を持って金を絞り出していて、いろんな男性を利用していたことがわかってくる。さらに税務署の役人も巻き込んでいく。この役人は仕事を辞めるところもまで追い詰められて…。室内で喋る主人公たちから屋上に視点が映ると呆然と立っている役人というカットとかめちゃ怖いです。

 かと思えば、伊藤雄之助さんが「もうあの貧乏には戻りたくない。人間の生活じゃない」と語って、一家4人が静かに何かを考え込むというシーンがあり。この家族に昔壮絶な何かがあったことが想像できます。

 やたらと丁寧な言葉遣いの奥さんの山岡久乃さんがパトカーの音が聞こえてくる外を見て、室内を振り返っ無表情というラストも不気味なオチでした。

 人間の強欲っぷりを面白おかしく描いた90分で退屈知らずの1本でした。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2021/06/24 NETFLIX

監督川島雄三 
脚色新藤兼人 
原作新藤兼人 
出演若尾文子 
伊藤雄之助 
山岡久乃 
川畑愛光 
浜田ゆう子 
高松英郎 
小沢昭一 
船越英二 
山茶花究 
ミヤコ蝶々 
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