●こんなお話
薩長軍が江戸城に迫って、勝海舟が無血開城に向けて幕府方と揉めたりしながら戦火を免れる話。
●感想
江戸城に新政府軍が迫る緊迫した状況の中、幕府側の使者・山岡鉄太郎が馬を駆けさせる場面から物語が始まる。江戸城内では主人公・勝海舟が、無益な戦いを避けるために開城を提案しているが、幕府内には反対する意見も強く、とくに榎本武揚は頑なに主戦論を唱えている。
勝は時に銃撃されて負傷したり、主戦派の刺客に襲われたりしながらも、粘り強く説得を続けていく。一方、新政府軍は刻々と城に近づいてきており、時間の猶予はない。
ついに勝は自ら西郷隆盛に会いに行く。直接交渉の末、江戸城無血開城の条件を持ち帰ることに成功する。しかしその条件をめぐっても内部の不満は大きく、幕府兵の中には納得できずに脱走しようとする者も出てくる。それでも勝は冷静に彼らを説得し、戦わずに道を開くことの意味を訴えていく。
やがて勝は、すべての交渉と準備を終え、徳川慶喜に報告する。そして最後に、最後まで開城に反対していた榎本武揚のもとを訪れ、その信念と胆力に理解を示しつつ、開城という決断に導いていく。ついに江戸城は開かれ、戦いを回避するという歴史的な決断が下され、物語はおしまい。
製作されたのが日米開戦と同じ年ということもあって、音声面ではやや難がありました。単純にセリフが聞き取りづらく、場面によっては何を言っているのか分からないところも少なくなかったです。しかしその分、画面に集中できて、主演の阪東妻三郎による軽妙な芝居をじっくり楽しむことができました。
物語の流れ自体は派手な展開こそないですが、新政府軍の進軍に対して、幕府内の強硬派をなだめながら交渉を進め、将軍に最終報告し、開城に至るというシンプルな構成。その中で2度ほど主戦派の刺客に襲われるアクション的な場面もありますが、物語全体としては静かな緊張が続くタイプの作品なので、興味がないとやや退屈に感じるかもしれないです。
とはいえ、幕末や歴史が好きな人にとっては、勝海舟という人物の魅力や、時代の空気感をしっかり味わえる一本で。70分という短さもあり、古い作品としては見やすい方だと思いました。
☆☆☆
鑑賞日:2023/10/26 Amazonプライム・ビデオ
監督 | 稲垣浩 |
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脚本 | 和田勝一 |
原作 | 吉田絃二郎 |
出演 | 阪東妻三郎 |
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原健作 | |
志村喬 | |
柳恵美子 | |
尾上菊太郎 | |
戸上城太郎 |