●こんなお話
無法地帯のニューヨークで住民たちを襲うサイコパス集団にスーパーマグナムで立ち向かう話。
●感想
前作では、自警団という行為についての是非や正義と暴力の線引きを考えさせるような要素も描かれていましたが、本作ではそうしたモラルの問いかけは潔いほどに姿を消しています。その代わりにあるのは、当時のニューヨークという街の混沌とした風景。いくら治安が悪かったとはいえ、ここまで振り切った世界観を描くのかと驚かされます。まるで武器が名刺代わりかのように、住民の誰もが銃を手にし、道行く人々が発砲を繰り返す。街そのものが小さな戦場のようになっていて、フィクションとはいえ、突き抜けた描写の連続です。
主人公が旧友を訪ねるという一見穏やかな導入も、ものの数分で修羅場に早変わりします。訪ねた先ではギャングに遭遇し、誤って逮捕されるという理不尽な展開。しかも警察組織もすでに機能不全気味で、法律ではどうにもならないからと、刑事が主人公の自警団行為をこっそり黙認するという流れになります。そこから物語は加速度的に暴力の世界へと向かっていきます。
ギャング団による強盗や暴行がランダムに降りかかるなか、主人公を含む住民たちがそれぞれに行動を起こしていきます。その行動の一つが、たとえば高級車を買ってわざと治安の悪い場所に停めておき、盗もうとした相手に銃をぶっ放すという、もはや策でも罠でもなく、ただの突撃精神としか言いようのない戦法。これはもう笑ってしまうような展開ですが、作品としては真剣に描いているので、なおさら面白く感じられます。
さらに印象的なのが、“ウィルディ”という友人の登場です。この人物、会う前にはどんな人物なのか少しばかり構えてしまいますが、現れた瞬間に巨大なウィルディマグナムという名の銃を携えていて、話のスケール感を一気に上げてくれます。物語が進むにつれ、今度はバズーカ、マシンガンといった重火器まで登場し、銃撃戦のスケールがまさかの軍事レベルへと突入していきます。
クライマックスとなるギャング団との戦いは、まさに撃ち合いの嵐。街中に鳴り響く銃声とともに、次々と倒れていく人々。画面に映る死体の数の多さに、いつしか観客の感覚も追いつかなくなり、シリアスを通り越してコメディのように笑ってしまうような瞬間すらありました。あまりの振り切り具合に、なんとも言えない多幸感すら漂ってくるラストです。
この作品の描くニューヨークは、もはや文明社会というより暴力が日常になったディストピアのような場所。しかし、それもまた映画の世界観としてしっかり貫かれていて、観ている側としては90分間、終始にこにことしながら楽しめる内容になっています。正義も秩序も混ざり合った街の中で、ただひたすら銃声が響く。そこに思想や哲学を求めるのではなく、ひとつのジャンル映画としての楽しさがある作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2021/03/08 WOWOW
監督 | マイケル・ウィナー |
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脚本 | マイケル・エドマンズ |
原案 | ブライアン・ガーフィールド |
出演 | チャールズ・ブロンソン |
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マーティン・バルサム | |
デボラ・ラフィン | |
エド・ローター | |
ギャバン・オハリー | |
カーク・テイラー |