映画【デス・ウィッシュ】感想(ネタバレ):昼は外科医、夜は自警団。ブルース・ウィリス主演の二重生活劇

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●こんなお話

 外科医が強盗に奥さんを殺され娘も傷つけられて、自警団として夜の犯罪者に私的制裁をする話。 

●感想

 昼間は腕の立つ外科医として命を救い、夜になると法の届かぬ悪を制裁するという2つの顔を持つ主人公。そのギャップと設定の妙は、ジャンル映画ならではの魅力がしっかりと感じられ、物語の入口としては掴みは十分にあります。表の顔と裏の顔、それぞれの生活を並行して描きながら、観客に「もし自分だったら」と問いかけてくる構成には一定の面白さがありました。

 家族に危害を加えられ、頼るべきはずの警察が思うように動かない現実。主人公がついに銃を手に取る決意をする流れには、現代社会における正義とは何か、正義を執行する権利は誰にあるのかといった、普遍的な問いが含まれています。とはいえ、ストーリー全体としては事件が発生しなければ主人公が動き出さない構造になっているため、受け身な印象が強く、物語の推進力としてはやや物足りなさも感じられました。

 映画の尺は約100分。リベンジものとしてはコンパクトな長さで、テンポ良く展開していくのかと思いきや、主人公が銃を手にしてトレーニングを始めたり、夜の街で犯罪を探すようになるまでには、意外と時間をかけて丁寧に描かれています。その間には、主人公の弟とのやり取りや、捜査にあたる刑事たちのサイドストーリーも差し込まれていますが、これらが本筋とどう交差していくのかが見えにくく、やや興味を持続させにくい展開となっていました。

 主人公の家に押し入った強盗との決着も、偶然の重なりによってあっけなく解決してしまう場面があり、驚きよりも少し肩透かしのような印象を受けました。まるでピタゴラスイッチのようにものが倒れて事態が転がっていく展開は、意図的な演出だとしても、緊張感のあるサスペンスやリベンジ劇を期待していた側からすると、意外な方向に転がっていきます。

 そして物語のクライマックスである自宅での銃撃戦も、感情を爆発させるような山場ではなく、淡々と終わっていくような描き方でした。もうひとつ熱量が欲しかったと思いつつも、主演のブルース・ウィリスが銃を構えたその瞬間だけで、どこか安心してしまう自分もいて、そこに俳優としての存在感の大きさを改めて感じました。彼がそこにいるだけで成立してしまう画の力。そんな部分に支えられた映画だったように思います。

 ジャンル映画の形式をなぞりながら、正義と暴力、そして個人の行動がどこまで許されるのかという問いをゆっくりと投げかけてくる1本。派手さは控えめながらも、好きな人には深く刺さる要素を持った作品でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2018/10/21 TOHOシネマズ川崎 2020/03/05 WOWOW

監督イーライ・ロス 
脚本ジョー・カーナハン 
出演ブルース・ウィリス 
ヴィンセント・ドノフリオ 
エリザベス・シュー

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