映画【リコリス・ピザ】感想(ネタバレ):1970年代の空気感と若者の恋——軽やかな時代の恋模様

LICORICE PIZZA
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●こんなお話

 アメリカの若い男女がウォーターベッドのビジネスしたりして恋愛の話。

●感想

 テレビ番組の収録が行われている撮影スタジオ。そこに現れたのは、子役俳優として少し名の知れた少年と、スタッフとして働いている女性。その現場で2人は出会い、少年のほうは彼女に一目惚れしたようで、出会ってすぐに積極的に話しかけていく。年齢の差こそあるものの、やがて2人は奇妙な距離感を保ちながら関係を築いていく。

 少年はテレビでの仕事を終えたあと、舞台の仕事でニューヨークへ行くことになり、女性もそれに同行することに。そこで出会った別の子役の少年と意気投合し、自宅へ招くが、その少年が無神論者で祈りを拒否したことから一悶着が起きたりもする。

 やがて少年は「ウォーターベッド」なる当時の新商品に目をつけ、これを売り出そうとビジネスを始める。勢いのまま販売を進めていくが、その最中に別の女性と親しげな様子を見せる場面を女性が目撃してしまう。一方、女性も俳優のオーディションで知り合ったベテラン俳優とデートをしてしまい、お互いに嫉妬のような感情が交錯する。

 さらに世の中ではオイルショックの話題が広がっていき、ウォーターベッドが石油製品であることに気づいた少年は、売れ残りのベッドを例のベテラン俳優に売り込もうとする。だが設置中に壊してしまい、俳優の自宅から逃げ出す羽目に。その後もガソリンスタンドでトラブルを起こし、トラックがガス欠で立ち往生したりと大騒動が続く。その様子を見ていた女性は、これまでの奔放な生活に区切りをつけるように、政治家の秘書として働く旧友を頼り、事務所で仕事を始めることになる。

 女性は次第にその政治家と距離を縮めていくが、後に彼が同性愛者であり、自分は“カモフラージュ”として付き合わされていたことを知り、落胆する。少年のほうも新たにピンボール事業に着手し、忙しく顧客対応をこなす日々。そんなすれ違いのなか、2人はそれぞれの場所から走って再会し、キスを交わして物語は終わる。

 全体としては、若者同士がくっついたり離れたりする姿を追っているだけと見えなくもないストーリー構成ではあるのですが、1970年代のアメリカの空気感が丁寧に再現されていて、その点にまず魅力を感じました。街並みや内装、ファッションなども時代性をしっかり映し出していて、美術や衣装の作り込みが見事だったと思います。

 また、登場人物たちの心の揺れがシリアスになりすぎず、軽やかに描かれていたのも心地よく感じました。多少の喧嘩や失敗も深刻になりすぎることなく、どこか楽観的な空気のなかで展開されていくため、終始ニコニコしながら観られる内容だったと思います。

 とりわけ驚かされたのは、まだ15歳の少年が次々と事業を立ち上げ、それなりに成功を収めていく姿です。ウォーターベッド、ピンボールなど時代を象徴するアイテムをビジネスとして扱い、時に失敗しながらも前へ進んでいく姿勢には、妙な説得力がありました。若者の行動力と、ちょっと抜けているところを含めて、好感のもてる主人公像になっていたように思います。

☆☆☆

鑑賞日:2023/02/15 WOWOW

監督ポール・トーマス・アンダーソン 
脚本ポール・トーマス・アンダーソン 
出演アラナ・ハイム 
クーパー・ホフマン 
ショーン・ペン 
トム・ウェイツ 
ブラッドリー・クーパー 
ベニー・サフディ 
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