●こんなお話
転売ヤーが仕事とか態度で恨みを買って物理的に攻撃されていく話。
●感想
序盤、主人公はとある工場を訪れ、謎の製品を安価で買い取ろうと交渉を試みます。工場主からは冷たく罵倒されながらもなんとか商品を手に入れ、ネットで転売を開始。その商品は飛ぶように売れ、主人公の元には次々と代金が振り込まれます。貯金通帳には数百万円単位の入金が確認できるほどになり、主人公はその成功に安堵します。
普段は工場勤務をしており、上司からリーダー職の打診も受けますが、あえてそれを辞退する慎重な姿勢が見受けられます。家では優しい恋人が彼を待っており、一見すると平穏な日常。
転売業の先輩から怪しげな投資話を持ち掛けられたものの断り、主人公は会社を退職。恋人と共に湖畔の静かな家へと引っ越し、そこで転売業を本格的に始めます。バイトを雇い、人気フィギュアの行列に並んでいる人々を横目に買い占める姿勢は、周囲からの非難を浴びながらも成功への執着を強めていきます。
ところが、夜になると家には石が投げ込まれ、警察へ相談に行くも、転売行為をしていることを理由に逆に疑われてしまうなど、社会的孤立が進行。さらに都内で郵送作業中に転売の先輩と再会し、「まだそんなことをしているのか」と冷笑を受けるなど、主人公の周囲は次第に歪み始めます。
やがて、恋人は主人公の元を離れ、バイトも主人公の私物のPCを勝手に覗いたことからクビに。孤独に転じた主人公の前に、ネット上で恨みを持つ者たちが集まり、彼を拉致・拷問しようとする事態へと発展します。
クビにしたはずのバイト青年が裏社会と繋がりを持っていたことが判明。彼は銃器を手に主人公を救出し、2人で拉致犯たちとの壮絶な銃撃戦を展開します。黒沢清監督らしい「撃って、吹っ飛ばされる」乾いたアクション描写が続き、リアクションの過剰さに思わず笑みがこぼれる瞬間もありました。
最終的に拉致グループを全滅させた後、現場に現れた恋人は、なんと金銭を要求。その裏切りにショックを受けた主人公は、バイト青年と共に現場を車で去り、おしまい。
前半の静謐で不気味なホラー的演出から、後半の派手なガンアクションへの落差が見事で、まさに二つのジャンルを融合させたような作品でした。特に黒沢清作品らしいリアルと突飛の間を行き来するようなアクション演出は唯一無二であり、ジャンル映画・エンタメ映画としてしっかりと振り切った構成が楽しく、心地よい緊張と解放を味わえる一作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2024/09/29 イオンシネマ座間
監督 | 黒沢清 |
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脚本 | 黒沢清 |
出演 | 菅田将暉 |
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古川琴音 | |
奥平大兼 | |
岡山天音 | |
荒川良々 | |
窪田正孝 | |
赤堀雅秋 | |
吉岡睦雄 | |
三河悠冴 | |
山田真歩 | |
矢柴俊博 | |
森下能幸 | |
千葉哲也 | |
松重豊 |